エンシュウ株式会社は、2025年3月期の業績予想を大幅に下方修正し、工作機械事業の黒字化に向けた組織再編を発表した。特に国内外の需要減少により同事業は低迷しており、今後は希望退職者の募集や全社を挙げた人員配置の見直しを進め、事業構造の再建を図る方針だ。
今回の発表によれば、同社の2025年3月期通期連結業績は、売上高2,280億円、営業利益10億円、経常利益はマイナス17億円、当期純利益はマイナス30億円と大幅な減額となった。こうした修正の背景には、主力である工作機械事業における北米および中国市場の低調な需要があるという。同事業は国内での自動車業界のEVシフトに伴う投資停滞に加え、海外市場でも中国経済の鈍化や北米地域での政治的要因による投資遅延が影響し、売上回復には時間がかかる見通しである。
エンシュウは、こうした厳しい状況を打開すべく、希望退職者の募集と人員再配置を進め、工作機械事業の構造改革を急ぐ構えだ。募集対象は2024年12月末時点で満50歳以上の正社員・シニア社員で、約30名の退職を見込んでいる。会社都合による退職金に加え、割増退職金を支給するほか、希望者には再就職支援も実施するという。
項目 | 前回予想 | 今回修正予想 | 増減額 | 増減率(%) |
---|---|---|---|---|
売上高(百万円) | 25,700 | 22,800 | △2,900 | △11.3 |
営業利益(百万円) | 600 | 100 | △500 | △83.3 |
経常利益(百万円) | 380 | △170 | △550 | – |
親会社株主に帰属する当期純利益 | 300 | △300 | △600 | – |
1株当たり当期純利益(円) | 47.59 | △47.59 | – | – |
事業別業績予想数値
事業 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) |
---|---|---|
工作機械事業 | ||
前回予想 | 12,800 | 130 |
今回修正予想 | 10,500 | △410 |
うち下期予想 | (5,270) | (120) |
部品加工事業 | ||
前回予想 | 12,800 | 420 |
今回修正予想 | 12,200 | 460 |
うち下期予想 | (6,300) | (430) |
黒字化に向けた取り組み
取り組み内容 | 詳細 |
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人員の適正化 | 希望退職者募集(対象: 満50歳以上の正社員・シニア社員、募集人数: 30名程度) |
売上回復に向けた重点施策 | システム工作機械、共同開発機械製造、レーザー加工システム事業、SIer&IoT事業、保守サービス事業 |
また、人員の再配置によって需要が堅調な部品加工事業やSIer事業を手がけるエンシュウコネクティッドへの転換を進め、グループ全体での生産効率を高めていく。同社は、これらの再編により経費削減と損益分岐点の引き下げを図り、黒字化の道筋を確保するとしている。
さらに、エンシュウは売上回復を目指し、システム工作機械の国内外市場での強化、医療分野を含む共同開発による機械製造、EV化に伴う軽量化対応のレーザー加工システム事業、SIer&IoT事業の拡大、保守サービス事業の拡充という5つの施策を推進。これにより、既存顧客への対応を強化しつつ、国内外での新規需要を喚起する計画だ。
今回の予想修正と組織再編は、2025年3月期下期での経営改善を見据えた戦略的判断である。同社は、全社的な経費削減策や工作機械事業の大型案件の増加、部品加工事業の成長、役員報酬減額など多岐にわたる施策を講じ、早期の経営立て直しを目指す。
「New Enshu」を掲げ、世界のものづくりへの貢献を誓う同社だが、主力事業の黒字化には依然として課題が多い。経営陣は今後も覚悟を持って挑む姿勢を示しているが、その成否には市場環境や組織改革の進捗が鍵となるだろう。 #人員削減 #業績 #ビジネス