【記者の目】
「見えない貧困」と「言語化された不安」――声を上げ始めた“ゆとりなき余裕層”の若者たち
今回の取材を通じて、筆者が何より印象的だったのは、取材対象の高校生・大学生18人の“語り口の真剣さ”だった。単に「苦しい」と嘆くのではなく、家計の状況、物価動向、政治の対応について、自ら調べ、考え、家庭内で交わされる会話をしっかりと受け止めていた。SNS世代と呼ばれる彼らは、日常の不満を“ただの愚痴”ではなく、“社会問題としての疑問”にまで昇華しつつある。
中でも、「うちの家計は見た目ほど余裕がない」「補助の対象にならないことで、逆に苦しくなっている」という声は、この国の政策が“階層の真ん中”をどれだけ見落としているかを示していた。支援が必要なのは、生活保護世帯や低所得層だけではない。“中の上”にも“下流化の足音”は確実に近づいているという現実に、政治はもっと敏感であるべきだ。
また、移民政策に関しても、高校生たちの発言からは家庭内での現実的な議論の存在が垣間見えた。決して差別的な視点ではなく、「人件費の調整弁」として外国人労働者が使われていることへの、いわば“将来的な生活不安”がにじんでいた。これは単なるナショナリズムではなく、競争とコスト削減の狭間に置かれることへの懸念であり、政治家や経済界が真摯に向き合うべきテーマだ。
一方で、筆者としては若者たちの一部に見られた“政治への諦め”や“白票という選択”に、強い懸念を覚えた。選挙への無関心、投票率の低下は、最終的に“自分たちの世代が損をする構造”を加速させる。現実が変わらないから投票しない、ではなく、現実を変えるために投票する。その視点を持ってほしいと願う。
実は今回取材した18人全員が、過去の選挙での投票や模擬選挙に参加した経験があると話していた。その経験値があるならば、なおさら、“投票は無力”と決めつけてしまうのは早計だ。政治とは、本来“完璧な答え”をくれるものではなく、“よりマシな選択肢を積み上げる”ものである。若い世代がこの工程を諦めてしまえば、その空白に入り込むのは、年齢の高い有権者層と特定のロビイストだけだ。
もう一点、少々厳しい視点を加えるならば、取材対象の中には「ペットの美容代を節約するのがつらい」「外食の回数が減ってテンションが下がる」など、“相対的には贅沢な悩み”もあったのは事実だ。もちろん、それぞれの家庭にとっては切実なのだが、より深刻な困窮に直面する層にとっては“共感されにくい苦しみ”であることも自覚すべきである。
ただし、それを理由に「お前らは贅沢だ」と切り捨てるのは、社会全体にとって不毛である。声を上げた者にだけ風当たりが強くなる社会では、次第に誰も本音を語らなくなる。そうならないためにも、政策をつくる側は、“見た目では分からない家庭のゆらぎ”をもっと丁寧にすくい取る努力が求められる。
いま日本は、消費税、社会保険料、教育費、物価上昇、エネルギーコスト、住宅ローン――ありとあらゆる支出が“静かに雪だるま式に増える構造”の中にある。それは、貧困層だけでなく、“見た目は普通の家庭”の心にも重くのしかかっている。そしてその皺寄せは、いまや高校生や大学生といった次世代の生活意識にも影を落としている。
“それなりに豊かな家庭”が、声を潜める社会ではいけない。“どこにも当てはまらない苦しみ”こそ、可視化する価値がある。
今回の取材で語られた18人の言葉は、時にユーモラスで、時に刺さるように鋭かった。そしてその全てに、未来への正直な不安と、まだ小さな希望が込められていた。
彼らの声が、どこかの議員の胸元にまで届くことを願ってやまない。 #事業 #ビジネス #ニュース
(Tittiby Japan News 編集部・光輪有児)
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