広島県尾道市因島を拠点に地域密着の製パン業を営んできた有限会社岡野製パン所が、2024年4月28日付で広島地方裁判所福山支部より破産手続開始の決定を受けたことが明らかになった。申立代理人によると、負債総額は約2億9,000万円に上る見通し。
同社は1926年の創業。創業以来、「保存料や保存目的の添加物は使わない」という方針を貫き、イギリス風の山型食パンを主力に据え、惣菜パンや菓子パンなども手掛けてきた。地元スーパーや個人商店などを主要な販路とし、地域住民の食卓を支えてきた存在である。
だが近年は、大手製パンメーカーとの競合が激化するなかで販売数量が伸び悩み、加えて小麦をはじめとする原材料価格の高騰が直撃。価格転嫁もままならず、収益は悪化の一途をたどっていた。資金繰りの逼迫が深刻化し、事業の継続を断念せざるを得なかった模様だ。
島しょ部という物流面での不利も影響したとの見方もあり、尾道市で飲食関連の物流会社を営む80代の女性は、編集部の街頭調査に「またひとつ、因島の老舗が姿を消した」と述べた。 #広島県 #尾道市 #倒産