「トイレが臭い」「ベッドに髪の毛が落ちていた」。こうした理由を用いて、日本のホテルで無料で部屋交換を受ける“裏ワザ”が中国のSNS上で拡散され、国内の宿泊業界関係者から困惑と反発の声が上がっている。
発端は、中国最大級のソーシャルコマースプラットフォーム「小紅書(シャオホンシュー、Xiaohongshu)」に投稿された一件。投稿者は、「日本ではフロントに文句を言えば無料で部屋を変えてもらえる」「お金を払って部屋を替えるなど愚の骨頂」などと指南し、いかにクレームを装って宿泊条件を“有利に交渉するか”を細かく紹介した。
具体的には、「浴室の臭いを理由にすれば30分の対応時間が発生し、前台が面倒がって部屋を変えてくれる」「新品の布団でも髪の毛が混入しているのは常態なので、それを見つけて撮影し提示すれば有効」といった内容で、清掃係の証言を根拠にしているという。
この投稿はスクリーンショットの形で日本のSNS「X(旧Twitter)」に転載され、18日午前に投稿されて以降、78万件を超える閲覧数を記録。一部ユーザーからは「中国人旅行者がクレームの仕方を共有している」「民泊でも“畳の匂いが不快だ”と言われたことがある」といった証言が寄せられたほか、「中国人は来るな」「モラルがない」といった意見も相次いだ。
一方、宿泊業界からは現場の疲弊を訴える声が上がっている。東京都内で複数のホテルを運営する企業の担当者は、「毎日のように“髪の毛が落ちていた”といったクレームが入り、そのたびに部屋の再清掃や交換を迫られる。スタッフの士気が下がるばかりか、他の宿泊客への対応にも支障が出る」と憤る。
問題の拡散元となった小紅書は、2013年に設立された行吟信息科技(上海)有限公司が運営する中国最大級のSNS型ECプラットフォームで、月間アクティブユーザーは3億人超に達する。美容、旅行、ファッション、ライフスタイルなどを中心に口コミ情報の共有が盛んで、特に20〜30代女性に圧倒的な支持を得ている。
当初は中国人観光客向けに海外ショッピングの攻略法を紹介するアプリとしてスタートしたが、現在ではEC機能とSNS機能を融合した“中国版Instagram×Amazon”と形容され、訪日旅行者にとっても現地情報を調べる定番ツールとなっている。アリババやテンセントといった中国IT大手から出資を受け、資金力と情報発信力を背景にその影響力は年々拡大している。
インバウンド需要の回復が進む中、宿泊施設側は異なる文化背景を持つ外国人観光客への対応に頭を悩ませている。国土交通省関係者は「“おもてなし”と“誤用されたカスタマーサービス”の線引きが難しくなってきている。今後、悪質な要求と正当な要望を見極めるガイドラインの整備も検討すべき」と話す。
訪日外国人との共存は、本当に日本にメリットを齎すのだろうか。
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