「コメは買ったことがない」──この不用意な一言が、ついに農相の椅子を揺るがした。
石破茂首相は20日、江藤拓農林水産相を更迭する方針を固めた。江藤氏は今月18日、佐賀市内の会合で「支援者がたくさん米をくださる。売るほどある」と発言。物価高に苦しむ国民感情を逆なでするかのような言葉に、与野党双方から厳しい批判が殺到していた。
政府・与党幹部によると、江藤氏は21日にも辞表を提出する見通し。事実上の引責辞任となり、昨年10月に発足した石破内閣にとって初の閣僚更迭。今夏の参院選を控え支持率低迷に喘ぐ首相にとっては、間違いなく政権運営の新たな火種となる。

■ 官邸、苦しい判断転換
首相は19日に江藤氏を首相官邸に呼び出し、厳重注意のみにとどめ続投を容認した。20日午前には記者団に対し「コメ価格の高騰にしっかり対応してもらいたい」と語り、引き続き職務を担わせる意向を示していたが、政局の空気は明らかに変わっていた。
同日午後、立憲民主党など野党5党の国会対策委員長が会談し、江藤氏の更迭を求める方針で一致。不信任決議案の提出も視野に入れる構えを示した。21日の党首討論を前に、野田佳彦代表らは「首相の任命責任は極めて重い」として更迭を正面から求める方針だった。
少数与党のもとでは、不信任決議案が可決される現実的な可能性がある。加えて、自民党内部からも「野党に先手を取られる前に幕引きを」といった声が上がり、首相官邸は急転直下で方針を転換する形となった。
■ 小泉氏が後任に浮上
後任には、小泉進次郎元環境相が最有力候補として浮上している。小泉氏は過去、自民党農林部会長として農協改革に携わった経歴を持ち、農政には実績と関心があるとされる。現行の食糧政策を刷新し、農産物流通や米価安定策にどう切り込むのか注目が集まる。
小泉氏は衆院神奈川11区選出で当選6回。昨年10月の衆院選後に党選挙対策委員長を辞任して以降、前線から一時離れていたが、今回の起用を機に再び表舞台に立つ可能性が高い。
■ 閣内の緩み、続く
石破政権は、これまでも閣僚の緩みが指摘されてきた。今年初めには鈴木馨祐法相による「月餅配布問題」、首相自身の「商品券配布問題」など、公私混同まがいの問題が相次いで浮上しており、今回の農相更迭で火の手が広がる可能性も否めない。
政治的にも経済的にも不安定さを増す中、農政を巡る舵取りは難しさを増している。コメは口に運べても、政治の言葉は消化しがたい──そんな国民の不信を、政権は払拭できるのか。
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