【独自】レンタカーSUV、返却されず転売発覚 弁護士「悪質な事例、法制度の盲点も」

神奈川県小田原市の有限会社近藤車体が貸し出した三菱自動車のSUV「エクリプスクロス」が返却されず、同社がSNS上で「行方不明車両」として情報提供を呼びかける事態となった。あしたの経済新聞編集部が同社を取材したところ、契約者が警察の聴取の中で「転売した」と自白していたことが判明した。

同社によると、今月10日の朝8時過ぎ、一本の電話が入った。「17日頃まで大きな車を借りたい」という利用希望者からの連絡だった。軽自動車であれば用意できたが、大型車は満車。そこで「14日までならSUVを貸せる」と伝えると、客は了承し、午前8時40分には来店し現金で契約を結んだ。契約内容に不審な点はなく、同社も「通常の貸出」と判断した。

しかし返却予定日の14日夜9時を過ぎても車は戻らなかった。担当者が電話を入れると、相手は「岩手の夫の実家に滞在中で、新型コロナに感染して高熱で動けない」と説明。その後も「18日には返せる」と約束したものの実現せず、「病院にいる」など言い訳を重ねた。24日になっても返却の見通しは立たず、同社が「夫に連絡がつかないのは不自然だ」と問い詰めても「仕事で携帯を切っている」との返答があるだけだった。25日にも進展がなく、26日に「法的対応をとる」とSMSを送信すると、契約者は突如「盗まれた」と警察に通報した。

だが警察が事情を聴くと説明は矛盾だらけで、追及の末に「第三者に売却した」と自白した。自宅の防犯カメラには契約者が第三者に鍵と車を渡す様子も映っており、虚偽の盗難通報は一気に崩れた。さらに契約者は「外国人に売却したが、30万円しか受け取れず騙された」と供述。警察は悪質性が高いとみて転売ルートの全容解明に乗り出している。

取材に応じた近藤車体の担当者は「ふざけるなという思いしかない」と憤る。「格安レンタカーはフランチャイズ形式が多く、実際に運営しているのは中小零細企業ばかり。一台を失うだけで経営は大きく揺らぐ。支払い能力のない相手からは損害を取り戻すこともできず、経営者や親族の責任にまで波及することになる」と語った。

今回の事案について、東京都江東区で弁護士事務所を経営する坂田弁護士は、あしたの経済新聞の取材に対し「借り受けた車を返却する意思なく第三者に渡した時点で、刑事責任の追及は避けられない」と厳しく指摘する。さらに「盗難を装って警察に通報した点は虚偽告訴等罪に当たりかねない。警察の捜査資源を不当に費消させた責任は大きい」と語る。

レンタカー会社側の対応にも課題は残るという。「契約時の身元確認や保証制度が甘ければ、同様の被害は繰り返される。保証金や連帯保証人制度の導入、貸出条件の厳格化は不可欠だ」と坂田弁護士は述べた。もっとも、被害額の回収は困難を極めるとみられる。「加害者に資力がなければ、裁判で損害賠償を勝ち取っても実際の回収は難しい。現実には事業者が泣き寝入りせざるを得ないケースが多い」と警鐘を鳴らす。

さらに中古車市場や海外への輸出ルートに流れる不正車両の存在にも言及。「こうした車両が裏ルートで流通すれば、犯罪の温床にもなりかねない。行政による追跡制度や輸出規制の強化が求められる」と強調した。

SNS上では今回の事件を受け「零細事業者を狙った悪質な犯罪だ」といった声が広がり、消費者や同業者の間でも議論が巻き起こっている。観光やビジネスの移動を支えるレンタカー産業は、生活インフラの一端を担う存在だが、その足元には貸出リスクという構造的な問題が横たわっている。

一台の損失が即座に経営危機に直結する零細企業にとって、今回の事件は決して他人事ではない。近藤車体の担当者は「警察の対応が真剣で感謝している」と述べつつも、経営者としての苦渋をにじませた。事件は今後、警察による転売経路の解明とともに、制度的な補強策の是非を社会に問いかけるものとなりそうだ。

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