
放送倫理・番組向上機構(BPO)は2025年10月21日、日本テレビ系のバラエティ番組「月曜から夜ふかし」で放送された街頭インタビューの内容について、「編集過程で発言の趣旨を歪曲し、放送倫理上の問題があった」とする審理結果を発表した。問題となったのは、中国出身の女性の発言部分で、BPOは「恣意的編集によって視聴者に誤解を与え、特定の国籍に対する偏見を助長する恐れがある」として放送倫理違反を認定した。
問題となった放送内容
問題の放送は2025年3月24日に放送された特集コーナー内で、街頭インタビューとして登場した中国出身の女性のコメントが一部切り取られ、「中国ではカラスが少ない。みんな食べてしまうから」とする趣旨の発言として紹介された。
実際の取材映像では、女性は「中国では飛んでいるカラスが少ない」と一般的な印象を述べただけだったが、番組ではその後に別の文脈の発言を編集でつなぎ合わせ、「中国ではカラスを食べる文化がある」と誤解されるような形で放送されていた。
この放送後、SNS上では「特定の国や民族に対する差別的な印象を与える」との批判が相次ぎ、当該女性が誹謗中傷の対象となった。日本テレビは放送直後に「意図的な差別表現はなかった」と説明したものの、番組制作過程の透明性を求める声が高まっていた。
BPO「発言の文脈を逸脱した編集」
BPO放送倫理検証委員会は、問題となった放送映像と未編集素材を精査した上で、「番組側が発言の前後関係を省略し、文脈を変えて編集した」と認定。「娯楽番組であっても、外国籍の人物に関する発言を取り扱う際は慎重な配慮が求められる」と指摘した。
委員会はさらに、「放送の自由を前提としつつも、事実関係を恣意的に加工して笑いの要素として消費することは、差別的偏見を助長するおそれがあり、倫理上の問題がある」と結論づけた。
日テレが謝罪と再発防止策を発表
日本テレビは同日、公式サイト上で「編集の一部に不適切な表現があり、出演者および関係者にご迷惑をおかけした」として謝罪。再発防止策として、今後は「外国籍や特定文化に関わる発言を含む映像の編集時には複数の担当者による内容確認を義務化する」と発表した。
また、全社員を対象にした放送倫理研修の強化や、番組編集プロセスの見直しを進めると説明した。番組のチーフプロデューサーも「視聴者の笑いを狙うあまり、配慮を欠いた編集となったことを反省している」とコメントしている。
SNS・視聴者の反応
問題の放送以降、SNS上では「外国人差別を助長する編集だ」との批判の一方で、「バラエティ番組の軽いジョークを過剰に問題視すべきではない」とする意見もあり、賛否両論が分かれていた。
BPOの決定を受け、番組視聴者やメディア関係者からは「放送倫理の範囲を明確化する良い契機になる」との声が上がる一方、「バラエティと報道の線引きをどう保つかが今後の課題だ」とする指摘もある。
専門家の見解
メディア倫理に詳しい立命館大学の岸本教授は、「バラエティ番組は報道と異なり、娯楽性が重視されるが、登場する一般人の発言や特定文化に関する表現は社会的影響力を持つ。笑いの演出であっても、国籍や文化を揶揄する形は避けるべき」と指摘した。
また、放送研究者の間では、「今回のBPO判断は、制作現場に対して“編集の自由”の限界を示したもの」との見方も出ている。特にAI生成映像やSNS素材を利用する番組が増える中で、「事実の歪曲」や「誤解を招く編集」が起きやすくなっているという。
今後の課題と放送倫理の再確認
BPOは今回の審理を通じて、「娯楽を目的とする番組であっても、放送法第4条が定める『事実を曲げない』『人権を尊重する』という原則は遵守すべき」と改めて強調。今後も放送倫理の確立に向け、放送局との対話を続ける方針を示した。
一方で、視聴者側にも「番組内の発言や編集をそのまま真実として受け取らず、メディアリテラシーを高める必要がある」とする意見も出ている。
今回のケースは、笑いのための演出と放送倫理の境界線を社会全体で見直す契機となった。日本テレビは11月以降、問題の放送回を含む一部エピソードを配信停止とし、今後の放送方針についても社内検討を進める見通しだ。
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