警視庁、退職代行「モームリ」運営会社などを家宅捜索 弁護士法違反の疑いで資料押収

退職代行サービス「モームリ」を運営する株式会社アルバトロス(本社・東京都)が、弁護士法違反の疑いで警視庁の家宅捜索を受けたことがわかった。警視庁は22日朝、同社の本社および都内の2か所の法律事務所を同時に家宅捜索し、関係資料を押収した。

■「弁護士に違法な交渉業務を委託した疑い」

捜査関係者によると、アルバトロス社は退職代行サービスの依頼者から受け取った退職意思の伝達を超えて、違法な「労働条件交渉」や「損害賠償請求」など、弁護士でなければ扱えない業務を外部の弁護士に依頼し、報酬の一部を紹介料として受け取っていた疑いが持たれている。

弁護士法では、弁護士資格のない者が報酬を得て法律事務に関与することを禁じており、また弁護士に対しても、非弁行為を助長するような提携や報酬の分配を禁止している。警視庁は、同社と弁護士事務所の間で継続的な業務提携があったとみて、資金の流れや契約実態を調べている。

■ 元従業員の内部告発で発覚

この捜査は、アルバトロス社の元従業員からの内部告発がきっかけだったという。元従業員は「会社は退職希望者に“会社との交渉も任せてほしい”と説明していた。実際には弁護士を通して労働条件の調整をしていた」と証言しており、警視庁が今年夏ごろから内偵を進めていたとみられる。

退職代行業界では、退職希望者の代わりに「退職の意思を伝える」ことまでは法律で認められているが、労使交渉に踏み込むと「非弁行為(弁護士法72条違反)」にあたる可能性がある。

■ 法律事務所も捜査対象に

今回の捜索では、アルバトロス社と業務提携していたとみられる都内の2つの法律事務所も対象となった。いずれの事務所も「現時点ではコメントを控える」としているが、警視庁は弁護士側が違法行為を認識した上で報酬を受け取っていたかどうかについても慎重に捜査を進めている。

専門家によると、弁護士法違反の立証には「業務の実態」「報酬の授受」「依頼者との関係性」の3点が鍵になる。法曹関係者の一人は「退職代行と法律事務所の提携はグレーゾーンだが、報酬のやり取りが明確なら違法性が高い」と指摘している。

■ 退職代行業界に広がる波紋

アルバトロス社の「モームリ」は、SNS広告などを通じて若年層の利用者を中心に急成長していた退職代行ブランド。24時間対応や「即日退職保証」をうたっており、過去には利用者の口コミが話題となっていた。

同社は今回の家宅捜索を受けて、公式サイトで「現在、警察の捜査に全面的に協力しております。事実関係を確認中のため、一時的にサービスを休止いたします」と発表。サービスは22日時点で新規受付を停止している。

退職代行サービスはここ数年、若者の働き方の変化に伴い市場が拡大しているが、法的トラブルも増加傾向にある。消費者庁によると、2024年度には退職代行に関する相談件数が過去最多を記録しており、「料金トラブル」や「退職が成立しなかった」といった苦情が多いという。

■ 専門家「法整備と透明性が急務」

労働問題に詳しい弁護士の佐藤俊一氏は、「退職代行の需要は高まっているが、現行法では業務範囲の線引きがあいまい。法的にどこまで可能かを明確にするルール作りが急務だ」と話す。

また、業界団体の関係者は「一部業者の不正が、真面目に運営している事業者まで疑われる結果になっている。弁護士と連携する場合も、報酬体系や契約内容を公表して透明性を高めるべき」と指摘している。

■ 今後の焦点

警視庁は今後、押収した資料の分析を進め、違法行為の実態が確認されれば、同社の経営幹部や関係弁護士を立件する方針。アルバトロス社は報道機関の取材に対し、「現段階では捜査中のため回答を差し控える」としている。

今回の事件は、急成長する退職代行業界における法的リスクと運営体制の課題を浮き彫りにした。専門家の間では、「依頼者の安心を守るためには、業界全体の法規制や資格制度が必要」との声が強まっている。

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