
東京都八王子市は10月24日、職員による通勤手当の不正受給が発覚したとして、関係する108人に対して懲戒・停職などの処分を行ったと発表した。市によると、職員97人が実際には徒歩や自転車で通勤していたにもかかわらず、バスや電車などの公共交通機関を利用していると虚偽申告し、2019年4月から2024年9月までの約5年半の間に総額915万4207円を不正に受け取っていたという。
■ 不正の手口と発覚の経緯
八王子市の発表によると、不正を行っていた97人の職員は、通勤経路を偽って申請を行い、定期券代相当の通勤手当を継続的に受給していた。多くの職員は実際には徒歩または自転車通勤をしており、公共交通機関を使用していなかったにもかかわらず、勤務先にはバス通勤を装って申告していた。
この問題は、内部監査の過程で一部の職員の通勤記録に不自然な点が見つかったことをきっかけに明らかになった。
調査の結果、同様の虚偽申告が複数部署で常態化していたことが判明。最終的に97人の職員に加え、監督・管理職11人を含む計108人が処分対象となった。
■ 処分内容と市の対応
市は不正を行った職員に対し、停職、減給、戒告などの懲戒処分を実施。また、監督責任を問われた幹部職員や管理職11人も訓告などの処分を受けた。
さらに、副市長を含む複数の幹部が報酬の一部返納を申し出ており、市としても組織的な責任を重く受け止める姿勢を示している。
不正に受け取った通勤手当については、全額返納が進められており、市は「既に大半の職員が返納手続きを完了した」と説明した。
■ 内部調査の遅れと「隠蔽疑惑」
一方で、市の内部調査が発覚から公表までに長期間を要したことが問題視されている。
市関係者によると、一部の職員からは「調査を意図的に遅らせたのではないか」「上層部が事実を伏せようとした」との声も上がっており、情報隠蔽の可能性が指摘されている。
市はこれを受け、第三者検討委員会を設置して再発防止策を検討する方針を表明。委員会には外部の法律・会計専門家を起用し、組織ぐるみの不正の有無や、通勤手当制度そのものの運用実態についても検証を行う予定だという。
■ 通勤手当制度の甘さが背景に
八王子市では、職員が通勤経路や交通手段を自己申告する方式を採用しており、実際の通勤状況を確認する仕組みが十分に整っていなかったことが今回の不正の背景にあるとみられる。
市関係者は「現行の制度では、職員の誠実な申告に依存しており、確認体制が脆弱だった」と説明。今後は定期的な現地確認や通勤経路の再審査を実施するなど、監視体制の強化を進めるという。
また、市民からの問い合わせも相次いでおり、「公務員としての信頼を裏切る行為」「税金の無駄遣い」といった批判の声が寄せられている。
■ 市長コメント「信頼回復に全力で取り組む」
八王子市の石森孝志市長は記者会見で謝罪し、「市民の皆様の信頼を損ねる事態を招いたことを深くお詫び申し上げます。再発防止に向け、制度の抜本的な見直しを進めるとともに、職員倫理の徹底を図ってまいります」と述べた。
市は11月をめどに、通勤手当の運用ガイドラインを改訂するほか、内部監査の独立性を強化する制度改正を行う方針。再発防止策として、申請書類のデジタル管理化や職員のランダム調査制度の導入も検討している。
■ 市民の信頼回復が課題
今回の問題は、地方自治体における通勤手当制度の脆弱性を浮き彫りにした。通勤実態の確認を行わず、長年にわたり虚偽申告が放置されていたことは、組織全体のガバナンス不足を示すものだ。
市内では「誠実な職員まで疑われかねない」「再発防止を徹底してほしい」といった意見が広がっている。
八王子市は、第三者検討委員会の結果をもとに、年度内に最終報告書をまとめる予定。市は「再発防止策を速やかに実施し、信頼回復に努める」としている。
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