
東京都港区が、2025年の「全国社長比率ランキング」で13年連続の全国トップとなった。東京商工リサーチが行った最新調査によると、港区の住民のうち 16.5% が法人登記上の「代表取締役」または「代表者」として登録されており、実に 6人に1人が会社経営者 という計算になる。前年から0.6ポイント上昇し、依然として他地域を大きく引き離した結果となった。
この調査は全国の法人データベースと住民基本台帳の人口データを照合して行われたもので、都心部に集中する経営者層の居住動向が浮き彫りとなった。港区内では、赤坂・六本木・麻布・虎ノ門 などの地区が特に高い比率を示しており、確認された社長の人数は 4,596人 にのぼる。これにより、港区は町村別ランキングでも13年連続でトップを維持した。
背景には、都心でのタワーマンションの増加や、オフィスと自宅を徒歩圏内に置く「職住近接」のライフスタイルの広がりがある。特に港区は、外資系企業やベンチャーキャピタル、ITスタートアップの拠点が集積しており、経営者層の居住ニーズを満たす高級住宅地が多い。麻布十番や白金高輪、赤坂などは、経営者だけでなく弁護士、医師、投資家など高所得層の定住地としても人気が高い。
また、港区は利便性と国際性を兼ね備えている点でも他地域に優位性を持つ。羽田空港や東京駅へのアクセスが良く、海外出張の多い経営者にとって理想的な拠点となっている。さらに、国際学校や外国人向けの医療機関も多く、外資系企業の経営者や海外投資家のファミリー層にも選ばれやすい。こうした環境が「社長比率の高さ」を長期的に支えているとみられる。
東京商工リサーチの担当者は、「港区はもはや“企業経営者の街”として確立されている。居住する経営者の業種は多岐にわたるが、特にIT関連、金融、不動産業が目立つ」と説明する。特にここ数年はスタートアップの起業率が高まり、20代〜40代の若手経営者が港区の新築高層住宅を購入するケースが増えているという。
一方で、同調査では地域間格差も顕著となっている。港区や千代田区、中央区などの都心部では社長比率が上昇する一方、地方圏では人口減少と企業廃業が進み、経営者人口が減少傾向にある。経済評論家の間では「富と起業環境が東京に一極集中する構図が、地方経済の空洞化を招いている」との指摘も出ている。
また、港区と並ぶ経営者集積地域である 世田谷区 では、社長数そのもの(絶対数)で全国1位を記録している。人口規模が大きいため、比率では港区に及ばないものの、実際の社長の数は港区を上回る。世田谷区は中小企業経営者や個人事業主が多く、港区の「高所得層・企業経営者中心型」とは異なる構造を示している。
都市政策の専門家は、「港区のような経営者集中地域は、税収面では大きな貢献をしているが、一方で住宅価格の高騰や地域コミュニティの分断といった副作用も無視できない」と指摘する。実際、港区内の平均マンション価格は都内平均の約2倍に達し、地元住民が転出する“富裕層ドミナント現象”も報告されている。
東京商工リサーチは、今後も年次で「経営者居住分布レポート」を公表し、地域経済の活力や税収構造への影響を追跡するとしている。
報告書では「経営者の居住地は企業の意思決定の重心を示すバロメーターでもあり、都市の魅力や経済政策の方向性を読み取る手がかりとなる」と総括している。
港区が13年連続で全国トップという記録を維持したことは、単なる統計上の現象ではなく、都市の構造的変化と社会の階層化を象徴するデータともいえる。日本のビジネスエリートの多くが港区を拠点に活動するいま、東京の都市政策は「経営者の街」としての港区の持続可能性をどう確保するか、次の段階に問われている。
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