
中国政府は2025年11月3日、日本を含む45カ国・地域を対象とした短期滞在ビザ免除措置を、当初の期限から1年間延長し、2026年12月31日まで継続する方針を発表した。これにより、日本人は観光、ビジネス、親族訪問などの目的で、30日以内の滞在であればビザなしで中国に入国できる状態が維持される。今回の延長は、中国側が国際往来の正常化と外国人訪問者の回復を重視している姿勢を示すものとみられる。
■ 背景:コロナ後の往来正常化政策の延長
中国は2023年以降、新型コロナウイルス対策として実施していた厳格な入国制限を段階的に緩和し、2024年には日本、フランス、ドイツなど主要国を対象に短期ビザ免除措置を導入していた。2025年末での終了予定だったが、外国人観光客や出張者の回復が想定よりも緩やかであったことを受け、今回の1年延長が決まったとみられる。
中国外務省の報道官は会見で「今回の措置は相互交流を促進し、国際経済の回復を支えるためのものだ。ビザ免除によって多くの国民が中国の発展を直接感じる機会を得るだろう」と説明した。
■ 日本側の反応:「実務上の利便性」評価の声
日本の外務省も同日、「中国政府の発表を歓迎する」とコメントを発表。政府関係者は「人的交流の活性化は日中関係の安定に寄与する」と述べた。日本国内では、特にビジネス関係者や観光業界から肯定的な反応が広がっている。
経済界では、「短期出張がビザ申請の負担なしに行えることは生産性向上につながる」(日本商工会議所関係者)、「中国市場との接点を維持する上で重要な措置だ」(製造業関係者)といった声が上がっている。
SNS上でも「便利になった」「久しぶりに上海に行ける」といった肯定的な意見が多く見られ、全体としては歓迎ムードが広がっている。
■ 一方で警戒感も:安全保障上の懸念
ただし、一部には慎重な見方もある。日本政府関係者の中には、「中国への渡航では依然として安全保障上のリスクが残る」との声があり、特に現地法人や研究者の拘束事案が過去に発生していることから、企業には「現地滞在時の法令遵守と情報管理を徹底するよう求める必要がある」との指摘も出ている。
専門家の間では、「ビザ免除は外交的な善意の表れであると同時に、観光・投資の呼び込みを狙った経済政策でもある」との分析がある。北京大学国際関係学院の研究者は中国メディアの取材に対し、「外国人観光客の増加は内需拡大に寄与するが、日本などとの関係改善にも利用されている」と述べている。
■ 日中交流の現状
日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2024年以降、日本から中国への渡航者数は年間約90万人規模で推移している。コロナ前の2019年(約270万人)に比べると依然として少ないが、上海、北京、広州などへの出張・観光需要は回復傾向にある。
また、中国から日本への観光客も回復しつつあり、日中間の往来再活性化は両国経済にとって重要なテーマとなっている。今回のビザ免除延長は、こうした流れを後押しする形だ。
■ 延長対象国と今後の展望
今回の延長措置は、日本のほかフランス、ドイツ、スペイン、マレーシア、シンガポール、タイなど計45カ国・地域を対象としている。中国政府は2026年中にビザ免除の恒久化や、電子ビザ制度のさらなる簡素化も検討しているとみられる。
外交筋によると、中国は欧州連合(EU)との関係改善や、ASEAN諸国との観光交流強化を同時に進めており、今回の延長はその一環とみられる。
■ 専門家の分析
日本の国際関係学者・佐々木准教授(仮名)は、「中国のビザ免除延長は経済的要請だけでなく、国際社会への開放姿勢をアピールする狙いがある。特に欧米諸国からの投資減少に対応するため、日本やアジア諸国との交流強化を重視している」と指摘する。
また、「日本にとっても、ビザなしで渡航できることで企業活動の迅速化や観光交流の再活性化が期待できる一方、政治的リスクの管理が不可欠だ」との見方を示している。
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