
11月4日は「いい推し(推しの日)」としてSNSを中心に広まりつつある記念日だ。
「推し」とは、もともとアイドルや俳優、アニメキャラクターなど、自分が“応援したい対象”を意味する言葉で、近年では一般的な文化語として定着した。「11(いい)」と「4(推し)」の語呂合わせからこの日が設定されたとされており、正式な制定団体は明確ではないものの、ファンコミュニティや企業のPR企画を通じて全国的に知られるようになった。
■ “推し活”という新しい生活文化
「推し活(おしかし)」という言葉は、単なる応援行為にとどまらず、日常の一部としてファン活動を取り入れるライフスタイルを指す。
ライブや舞台の観覧、グッズ収集、SNSでの応援投稿、聖地巡礼、ファンアート制作など、形は人によって多様だ。経済的な支出を伴う場合も多く、マーケティング業界では「推し活経済」と呼ばれる新たな市場を形成している。
調査会社「マイボイスコム」の2024年調査によると、「自分に推しがいる」と回答した人は全体の約45%に達し、特に20代女性では7割を超えるというデータもある。「推しがいることで日々のモチベーションが上がる」「生きる目標ができた」といった声も多く、推し活は精神的な支えとしての側面も持つ。
■ デジタル時代における“距離の近い推し”
SNSや配信文化の発達により、ファンと推しの距離はかつてなく近くなった。
YouTubeやTikTok、X(旧Twitter)などのプラットフォームでは、芸能人だけでなく、VTuberや一般クリエイターも“推される存在”となっている。これまでの「アイドル文化」が限られた業界の中で展開されていたのに対し、いまや「誰もが誰かの推しになれる」時代となったのだ。
また、ファン同士の交流も活発化しており、推しを通じて新たな人間関係が生まれるケースも多い。
「同担拒否」「沼る」といったネットスラングもこの文化圏から派生し、推し活がひとつの社会言語を形成していることがうかがえる。
■ 経済と社会に与える影響
推し活の拡大は、消費行動にも変化をもたらしている。
2023年の博報堂生活総研の分析では、「推し活関連消費」は年間約1兆円規模に達する可能性があるとされる。ライブチケットやグッズだけでなく、「推しカラー」のコスメや日用品、さらには“推し貯金”や“推しノート”など、生活全体を彩る経済圏が構築されつつある。
一方で、過度な出費や依存、過剰な同担争いといった問題も指摘されている。
心理学的には「擬似的親密性」や「投影愛」といったメカニズムが関係しており、推し活が幸福感をもたらす反面、行き過ぎればストレス源にもなりうると専門家は警鐘を鳴らす。
■ “推し”を持つことの意味
「推し」は単なる趣味や娯楽の対象ではなく、自己表現や精神的支柱として機能している。
現代社会では、他者との比較や成果主義の中で自己肯定感が揺らぎやすいとされるが、推しの存在は「自分の中にある好きという感情」を可視化する役割を果たしているとも言える。
11月4日の「いい推しの日」は、そうした“好き”を祝福し、互いの推し活を尊重し合う日としてSNS上で盛り上がる。
ハッシュタグ「#いい推しの日」には、アイドルの写真やファンアート、手作りグッズの投稿が相次ぎ、ファン同士が「推しへの感謝」を共有する文化が広がっている。
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