
韓国警察は、日本在住の韓国人YouTuber「デボちゃん」ことイ・ドンヒョク氏(30)が、韓国国内で「下半身だけの遺体37体が発見された」とする虚偽の映像を投稿したとして、電気通信基本法違反(虚偽情報流布)の疑いで捜査を開始した。
この動画は10月22日に投稿され、日本語圏のSNSを中心に急速に拡散。韓国社会に不安と混乱をもたらしたとして、政府関係者も「前例のない影響力を持つフェイク動画」と警戒を強めている。
問題となった動画は、匿名掲示板に投稿された「韓国南部の山中で切断された遺体が大量に発見された」という書き込みを引用し、デボちゃんが「これは韓国史上最大の事件」と題して発信したもの。
動画は日本語で編集され、字幕や現場を偽装したAI生成画像が使用されていたとみられる。投稿から数時間で視聴回数は30万回を超え、X(旧Twitter)やTikTokにも転載された。
その結果、「韓国で大量殺人事件が起きた」という誤情報が国際的に拡散し、韓国の大手ポータルサイトでも一時トレンド入りする事態となった。
韓国警察はこの件を「国家的信頼を損ねる重大なサイバー犯罪」と位置づけ、捜査当局のサイバー捜査課と警察庁情報局が合同で調査を進めている。
警察関係者は「情報源の確認を怠り、明確な虚偽を含む内容を発信した」として、動画の削除後も刑事責任を追及する方針を示した。
一方で、イ氏は「自分が直接捏造したわけではなく、匿名コメントを翻訳して紹介しただけ」として冤罪を主張しており、韓国メディアの取材に「誰かが私を陥れようとしている」と反論している。
デボちゃんは日本と韓国を行き来しながら活動してきたYouTuberで、登録者数はおよそ48万人。社会問題をテーマにした動画や時事解説で人気を博していたが、過去にも過激な内容で「事実誤認」との指摘を受けていた経歴がある。
今回の件を受け、YouTube運営側は「虚偽の犯罪情報を含む動画は利用規約に反する」として、該当チャンネルの一部コンテンツを一時的に非公開化。
また、韓国内の放送通信委員会も「国際的なフェイクニュース対策の枠組みを協議する」と発表した。
韓国国内ではSNSを通じたフェイク情報の拡散が社会的課題となっており、今年に入ってからだけでも「廃棄食品で作られた弁当」「政府が国民を監視している」などの虚偽投稿が複数摘発されている。
今回の件について韓国中央日報は、「海外在住のYouTuberによる発信が韓国世論を混乱させた初のケース」と報じ、「フェイクニュースの国境を越えた流布に対処する国際連携が必要」と論評した。
一方、SNS上では「警察の対応が過剰だ」「動画の削除で十分ではないか」といった意見もあるが、韓国警察は「視聴者の不安をあおるだけでなく、海外メディアにも影響を与えた」として強い姿勢を崩していない。
捜査関係者は「フェイク情報が犯罪被害者や遺族の存在をねつ造することは、社会的信頼を破壊する行為だ」と述べ、刑事罰の適用を視野に入れているという。
YouTube側は今後、AI生成映像や虚偽報道を識別する機能を強化する方針であり、国際的な“フェイクニュース対策競争”は新たな局面を迎えている。
今回の一件は、個人の発信力が国境を越えて社会に影響を及ぼす時代における、情報リテラシーの重要性を改めて突きつけたと言える。
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