
政府は今月上旬、「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」を首相官邸で開催した。
この会議は、外国人の受け入れ拡大に伴う社会的課題や地域摩擦の解消を目的に設けられたもので、首相は「排外主義とは一線を画しつつ、秩序を保った共生社会を築くことが重要だ」と強調。関係閣僚に対し、法令遵守の徹底と制度運用の適正化、さらに外国人による土地取得など国土利用に関するルールの在り方を検討するよう指示した。
今回の閣僚会議には、法務大臣、外務大臣、国土交通大臣、内閣官房長官らが出席。
議題の中心となったのは、2026年度からの導入が予定されている新たな「育成就労制度」に向けた制度整備と、全国で増加する外国人労働者・留学生の地域定住を見据えた「秩序ある共生」の仕組みづくりである。
法務省の報告によれば、2024年末時点で日本に在留する外国人数は約370万人に達し、過去最多を更新。特に地方圏での外国人定住が急増しており、労働市場・地域行政・教育現場における調整が喫緊の課題となっている。
政府関係者によると、今回の指示の柱となるのは「既存制度の見直しと透明化」。
技能実習制度廃止後も労働力確保を円滑に進めるため、悪質な仲介業者の排除、労働契約の標準化、在留資格手続きの迅速化などを進める方針だ。
同時に、外国人による不動産取引の急増を受け、国土の安全保障面からも土地取得や利用のルールを再検討する必要があるとされた。
政府は今後、登記情報の国際的照合システムを強化し、外国法人名義の土地購入実態を把握する仕組みの構築を検討する。
首相は会議の中で、「共生社会とは、文化や国籍の違いを理由に分断を生むものではなく、互いのルールを尊重しながら社会を支える関係である」と述べ、排外主義的な言動や誤情報の拡散を牽制した。
そのうえで、地方自治体や企業が外国人住民と協働する枠組みを支援する考えを示し、地域通訳体制の拡充、外国人相談窓口のデジタル化なども検討対象に含めるよう求めた。
また、外務省からは「外国人受け入れを通じた国際的信頼の向上」を目的に、入国・在留制度の説明責任を果たす広報体制を強化する案が提出された。
国交省は、土地利用の観点から外国人の所有実態や転売ルートを分析し、国土保全・防衛関連施設周辺での取引制限のあり方について協議を行う予定としている。
一方で、「外国人排除の文脈で議論すべきではない」とする慎重論も閣僚間で上がっており、政府としては「透明性と秩序の両立」を基本方針に据える構えだ。
専門家からは、今回の会議を「排他主義に陥らない制度改革の試金石」と評価する声が上がっている。
一橋大学の社会政策学者・南川耕平氏は、「政府が“秩序ある共生”を掲げたのは、外国人を労働資源としてではなく、社会構成員として位置づける姿勢の表れ」と指摘。
ただし、「土地取引の制限や監視が過度になれば、外国人差別との誤解を招く懸念もある」とバランスの必要性を強調した。
政府は今後、関係省庁横断のワーキングチームを設置し、2026年度を目処に「共生社会実現基本方針(仮称)」を策定する見通し。
これには、労働・教育・住宅・国土利用といった多領域にわたる具体策を盛り込み、外国人が安心して暮らせる環境と、日本社会の秩序維持の両立を目指す。
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