
総務省は11月7日、ファイル共有ソフト(P2P方式など)を介した違法アップロードの増加に関し、著作権侵害の危険性について改めて注意を呼びかけた。発表によると、2024年の発信者情報開示請求件数は過去最多となる15万4484件に上り、そのうち95.6%がアダルト動画の違法共有に関する著作権侵害であったという。総務省は「ダウンロード中に自動的にアップロードされる仕組みを理解しないまま使用しているケースが多く、利用者が知らぬ間に違法状態に陥っている」と指摘している。
今回のデータは、主要プロバイダおよび知的財産関連団体の報告を基に集計されたもの。P2P(ピア・ツー・ピア)方式のソフトは、ファイルを直接他の利用者と共有する仕組みを持ち、動画・音楽・ソフトウェアなどの大量データ交換に使われている。しかし、その匿名性を過信した利用者が違法コンテンツを拡散させてしまう事例が相次ぎ、権利者からの法的措置が急増している。
特にアダルト動画分野では、配信元が不明な違法コピーが氾濫し、海外サーバーを経由した再配信も確認されている。総務省の担当者は「利用者が“自分だけが見ている”と思ってダウンロードしても、同時に他者へ自動的にアップロードされているケースが多い」と述べ、無自覚な違法行為の危険性を強調した。
一方、開示請求が認められた場合、利用者の氏名・住所・契約情報などがプロバイダを通じて開示され、権利者側から損害賠償請求を受ける可能性がある。実際、近年はアダルト動画制作会社や配信事業者が代理弁護士を通じて数万円〜数十万円単位の示談金を請求するケースが増加しており、法的トラブルに発展する例も報告されている。
さらに、総務省は今回の発表で、著作権侵害の刑事摘発件数も増加傾向にあると明らかにした。警察庁によると、2024年に著作権法違反容疑で書類送検された件数は前年より23%増加し、そのうち約8割がファイル共有ソフト経由の拡散だった。摘発対象には「違法アップロードを知らなかった」と主張する個人ユーザーも含まれており、無知による利用が刑事責任を免れない現状が浮き彫りとなっている。
専門家の間でも、P2Pソフト利用への警戒が広がっている。情報セキュリティの専門家は「P2Pソフトは匿名通信をうたうが、実際には通信記録が残る。ネットワーク上での完全な匿名性は存在しない」と指摘。著作権に詳しい弁護士も「ダウンロードしただけではない、という点を理解すべき。自動共有設定によって“配信者”となる瞬間が発生する」と警鐘を鳴らしている。
また、SNSや掲示板上では「開示請求を受けた」「突然弁護士からメールが届いた」といった報告も相次いでおり、一部では不当請求を装った詐欺まがいの行為も確認されている。総務省は「正規配信サービスを利用することが最も安全であり、怪しいファイル共有サイトや不正ソフトには一切アクセスしないように」と呼びかけた。
政府は今後、著作権侵害の抑止を目的に、プロバイダ責任制限法の見直しや、違法アップロード検知AIの導入なども検討している。総務省関係者は「技術的対応だけでなく、国民一人ひとりのリテラシー向上が不可欠だ」と述べ、教育現場での啓発活動も強化する考えを示した。
利用者の多くは「違法と知らなかった」「無料だから利用した」と説明するが、法的にはその主張は通用しない。著作権者の許可なく作品をアップロードした時点で侵害が成立するため、今後も摘発が続く見通しだ。
総務省は今回の発表をもって「個人利用のつもりでも、公開設定があれば犯罪になりうる」と強調しており、ネット社会における情報倫理の再認識を促している。
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