
高級家電メーカーのバルミューダ株式会社(東京都武蔵野市、東証グロース上場)は7日、2025年12月期の通期連結業績予想を大幅に下方修正すると発表した。純利益は従来見込みの1000万円黒字から15億円の赤字へ転落する見通しとなり、売上高も当初計画の125億円から98億円へと約2割減少する。発表を受け、同社株は取引開始直後から急落し、一時800円を割り込むなど市場の失望感が広がった。
発表資料によると、営業利益は2000万円の黒字予想から9億3000万円の赤字へと修正された。主な要因として、国内外における物価高や消費マインドの低下に加え、在庫の評価損約5億円を計上したことが挙げられている。特に、2023年に発売した自社スマートフォン「BALMUDA Phone」の販売不振が響き、関連する開発費や在庫処理が業績を大きく圧迫したという。
同社は2021年にスマートフォン市場へ参入し、デザイン性と独自の世界観を打ち出した「BALMUDA Phone」を投入したが、性能面や価格帯を巡る批判が相次ぎ、販売台数は想定を大きく下回った。その後も在庫処分を進めたものの、販売減少が長期化し、ブランド全体への信頼低下を招いたとされる。
バルミューダは当初、キッチン家電の「BALMUDA The Toaster」や「The Range」などの高付加価値路線で急成長を遂げたが、近年はコロナ禍後の生活様式の変化や消費者の価格志向の高まりを受け、主力製品の販売も伸び悩んでいる。特に家電量販店における販売単価の下落や仕入れコストの上昇が重荷となり、国内外の収益構造に歪みが生じている。
今回の下方修正により、同社の財務健全性にも懸念が広がっている。自己資本比率は直近期末時点で44%と比較的高水準を保つものの、2期連続の赤字計上となれば資金繰りへの影響も避けられない。市場関係者の間では「ブランド戦略の見直しを迫られる可能性がある」との声も上がる。
一方で、同社は声明の中で「製品ポートフォリオを再構築し、2026年以降の再成長を目指す」との方針を示した。すでに新型オーブンレンジやコードレス家電シリーズの開発を進めており、2026年春をめどに順次投入する計画という。スマートフォン事業については「一部地域での販売を継続しつつ、技術を他製品に応用する」として、全面撤退の可能性には言及していない。
証券アナリストの間では、同社が抱える課題を「デザインブランドとしての強みと、量産家電メーカーとしての収益性の両立が難しい構造」と分析する声が多い。ある大手証券のアナリストは、「ブランド価値を守るための高価格戦略が購買層を狭めており、今後は中価格帯への展開が鍵になる」と指摘した。
また、SNS上では「トースターは良い製品だが、スマホに手を出したのが誤算だった」「再び原点回帰してデザイン家電に集中してほしい」といった意見が相次いでいる。特に個人投資家の間では「創業期の理念を見直すべき」とする声もあり、同社の経営判断に対する注目が高まっている。
同社の寺尾玄代表取締役はコメントで「当社の強みはデザインと感性に基づく創造力にある。短期的な損失を恐れず、ユーザーの体験価値を再構築する」と述べ、事業再建への意欲を強調した。
バルミューダは今後、コスト構造の見直しと新製品群の投入を軸に、2026年度の黒字転換を目指す方針。投資家の信頼回復には時間を要する見通しだが、同社の次の一手が業界内外から注目されている。
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