肝臓病患者の「ティラミス誤飲」投稿が波紋 SNSで数百万回拡散 アルコール表示制度の見直し論浮上

北海道在住の肝臓病患者を名乗るユーザーの投稿が、食品表示制度をめぐる議論を巻き起こしている。投稿者「たあきん」氏は今月上旬、市販のティラミスを購入して食べたところ、微量のアルコールを含んでいたことに気づかず体調を崩したとX(旧Twitter)に投稿。「肝臓病を抱える自分が、知らずにアルコールを摂取してしまった。命に関わる恐れがあった」とするその訴えは、多くの共感を呼び、数百万回の閲覧を記録した。

投稿の中でたあきん氏は、商品パッケージには「アルコール分を含む」といった明確な表示がなく、注意書きも小さく視認しづらかったと指摘。「食品業界が“微量だから問題ない”と考えているなら、それは命を軽視する発想だ」と強い言葉で訴えた。さらに、「病気や体質によりアルコールを摂取できない人も、安心して食べられる社会であってほしい」と呼びかけた。

この投稿は短期間で拡散し、アルコール不耐症者や妊婦、運転前の消費者らから「自分も似た経験をした」「ケーキやスイーツにアルコールが入っていると知らずに食べて具合が悪くなった」との報告が相次いだ。一方で、「伝統的なレシピのティラミスは洋酒を使うのが常識。消費者が学ぶべき」との意見も見られ、SNS上では“製造者責任”と“消費者責任”をめぐる激しい論争が起きている。

消費者庁によると、現行の食品表示法ではアルコール分が1%未満の食品は「酒類」とみなされず、原則としてアルコール量の明示義務はない。洋菓子や調理品などに使用されるラム酒やブランデーは、風味づけ目的で少量含まれている場合が多いが、その含有量は商品によってまちまちだという。

日本肝臓学会の専門医は「肝硬変や慢性肝炎の患者にとって、微量でもアルコールは代謝に負担をかける。摂取後に倦怠感や吐き気、発熱などが起こることもある」と説明。さらに、「製造段階でアルコールを加熱していても完全に飛ばない場合があるため、消費者への明確な情報提供が求められる」と指摘している。

厚生労働省関係者は8日、「食品表示の分かりやすさは消費者の安全に直結する問題。今回の件は制度の運用を再点検する契機になり得る」と述べ、消費者庁と連携してアルコール含有食品の表示の在り方を検討する考えを示した。業界団体の一部からも「アルコール入り菓子を対象としたガイドライン整備が必要ではないか」との声が上がっている。

一方、製菓業界からは慎重な姿勢も見られる。ある大手洋菓子メーカーの担当者は「風味を保つための洋酒使用は長年の製法上欠かせない。『アルコール入り』と強調しすぎると売れ行きに影響する」と懸念を示したうえで、「一律の規制ではなく、わかりやすい説明表示の工夫で対応したい」と話した。

SNS上では「健康被害の問題を軽視してはならない」「製造側の誠実な説明があれば防げた」という声が広がる一方で、「少量なら自己管理の範囲では」「過剰反応ではないか」といった意見も根強い。議論は、食品業界と消費者双方の「責任の線引き」という根本的な問題に発展している。

国内の肝疾患患者は約500万人、アルコール不耐症を含めると潜在的な影響人口は1000万人を超えるともされる。消費者団体の代表は「多様な体質を前提とした表示制度への転換が必要だ。『飲める人基準』から『誰でも安全に食べられる基準』へ変えるべき」と訴えている。

一方で、投稿を行ったたあきん氏は続報の中で「メーカーから謝罪の連絡を受けた」と明かし、「批判が目的ではなく、同じ病気を持つ人が安心して生活できる社会を作りたい」と記している。

今回の議論をきっかけに、食品と健康リスクをめぐる表示制度の在り方が、改めて問われている。

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