
VTuberや個人配信者の間で、YouTube上のスーパーチャット(いわゆる「スパチャ」)やメンバーシップギフトが相次いでキャンセルされ、配信者が実質的な損害を被る被害が広がっている。問題は2025年11月上旬ごろからSNS上で急速に注目を集めており、X(旧Twitter)上では「スパチャキャンセル」「収益赤字」がトレンド入りした。
被害は、海外を拠点とする匿名アカウントによって高額のスパチャが一時的に送金されるものの、数分以内に決済が取り消されるというもの。送信側のキャンセルによって返金が行われる一方で、YouTube側の手数料は配信者負担のままとなる仕組みが悪用されている。これにより、収益どころか「赤字」になるケースが続出している。
VTuberの関係者によれば、被害を受けた配信者の中には、送信額が数十万円規模に及んだ事例も確認されており、活動資金を直撃する深刻な問題に発展しているという。「海外からのスパチャが増えて喜んでいた矢先、翌日にすべてキャンセルされていた。通貨換算手数料とプラットフォーム手数料を合わせるとマイナスになった」と話す個人配信者もいる。
この「スパチャキャンセル」は、いわば決済プラットフォームの構造的な欠陥を突いた嫌がらせ行為だとみられる。YouTubeではスパチャ送金後に返金を行った場合、支払い処理に関する手数料は返還されない。結果として、配信者が返金に伴う負担を一方的に被る形になる。
日本国内のVTuberコミュニティでは、こうした行為を「スパチャ詐欺」と呼び、対策を求める声が相次いでいる。中堅VTuber事務所のマネージャーは「キャンセル被害は今年に入ってから顕著に増えている。海外IPアドレスからの大量送金は即時ブロックするしかない」と警戒感を示した。
YouTube運営側は現時点で公式な声明を出していないが、利用規約上、送金後の返金は購入者の決済会社による裁量とされており、クリエイター側に明確な補償制度は存在しない。専門家の間では、「金融的リスクを配信者に転嫁する構造になっている」との批判も出ている。
さらに深刻なのは心理的な影響だ。VTuber活動を支えるのはファンからの支援であるが、その信頼関係が損なわれる恐れがある。実際、一部の配信者はスパチャ機能を一時停止し、「メンバーシップのみ継続」という対応を取り始めた。ファンからも「誠実な支援者まで疑われるのは悲しい」「YouTubeが何らかの保護策を導入すべき」といった意見が相次いでいる。
こうした中、クリエイター支援プラットフォーム全体にも波紋が広がっている。ライブ配信業界の関係者は「今後、スパチャキャンセル問題はYouTube以外のプラットフォームにも波及しかねない。仮想通貨や第三者送金を悪用した新たな詐欺も懸念される」と指摘する。
VTuber業界では、スパチャ収益が活動資金の大半を占めるケースも少なくない。今回の問題は、単なる一過性のトラブルではなく、配信者とプラットフォームの関係そのものを問うものとなっている。YouTubeが今後、透明性の高い返金制度や不正送金対策を導入できるかどうかが焦点になりそうだ。
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