Xで拡散「セルフレジ未払い体験談」 警察拘束事例に共感広がる 精算忘れと“万引き”の境界を問う

SNS「X(旧Twitter)」上で、セルフレジにおける“精算忘れ”が万引き容疑に発展した体験談が急速に拡散している。投稿主のSirogaras氏(@Albino_crow_)は、自身がペットボトル3本の会計を忘れたことで、警察に通報され4時間にわたり事情聴取を受けたと明かした。この投稿は瞬く間に拡散し、数万件のエンゲージメントを記録。ネット上では「同じ経験をした」「意図的ではないのに犯罪扱いされた」といった共感の声が相次いでいる。

投稿によると、Sirogaras氏は「会計の際に商品の一部をスキャンし忘れたまま袋詰めしてしまった」と説明。その後、警備員の通報を受け、近隣の警察署で事情を聴かれたという。結果的に故意性は認められず釈放されたものの、「たった数本の清涼飲料水で拘束されるとは思わなかった」との記述が注目を集めている。

X上では、「同じように子ども連れで焦って支払いを忘れた」「自動レジの操作画面が分かりにくい」「確認音が小さく支払い完了と思い込んだ」といった類似の体験談が次々と投稿された。中には「誤解された経験を持つ人は多いのでは」と指摘する声も見られる。

警察庁の統計によると、セルフレジの導入が進む近年、こうした“過失的未払い”による万引き容疑の立件件数が増加傾向にある。2021年に全国で確認されたセルフレジ関連の検挙件数は約270件だったが、2024年には700件を超えた。背景には、店舗側の監視体制強化と同時に、客側の操作慣れ不足やシステム設計上の複雑さがあるとされる。

流通業界関係者は「店舗としては損失防止のため警察に通報せざるを得ないケースがあるが、実際にはミスの割合が非常に高い」と明かす。大手スーパーでは、AIカメラで商品のスキャン動作を自動認識し、レジ通過商品と購入データの一致をリアルタイムで確認するシステムの導入を進めている。

消費生活アドバイザーの白石真紀氏は、「セルフレジは利便性の裏で、法的な『意図』の判定が難しい構造を持つ」と指摘する。例えば、スキャン漏れや操作ミスがあっても、その行為が“窃盗”か“過失”かの判断は現場警察官や検察の裁量に委ねられる場合が多い。「無意識のうちに万引き容疑者になるリスクは、一般利用者が認識しておくべき」と語る。

SNS上では今回の件をきっかけに、「セルフレジの責任範囲」や「AI監視とプライバシーのバランス」に関する議論も広がっている。ある投稿者は「自動化が進むほど人間のミスが許されなくなっている」と指摘し、別のユーザーは「防犯カメラで確認すれば済むはず」と運用の柔軟化を求めた。

専門家は、こうしたトラブルを防ぐには「顧客の最終確認プロセスを明示化すること」が不可欠とする。支払い完了時にレシートを自動印刷する機能や、退店ゲートで支払い済みを検証するAI照合システムの導入が推奨されている。特に高齢者や視覚障害者にとっては、音声ガイドや画面色分けなどのUX(利用体験)改善が急務とされる。

近年、セルフレジの利用率は全国のスーパー・コンビニで8割を超えた。日本フードサービス協会の調査では、「人手不足による導入拡大」と「客のプライバシー重視」が並ぶ理由として挙げられている。一方で、システム導入企業の半数が「誤操作や支払い漏れが月に数件以上発生している」と回答しており、現場では“利便とリスク”の両立が課題となっている。

警察庁は、セルフレジ関連の事案について「現場での状況確認を慎重に行う」との方針を示す一方、業界団体に対しても「AI監視技術の強化や操作支援表示の改善」を求めている。

SNS発の一件が示したのは、便利さの裏に潜む“過失と犯罪のあいだ”という現代的なテーマだった。今後、法制度や技術設計の両面で、セルフレジ社会の在り方が問われることになりそうだ。

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