
北海道の小都市が歩んだ「再生の18年」—財政再建から次の課題へ
北海道夕張市が、2007年の財政破綻から18年を経て、ついに国への借金を完済する見通しとなった。2026年度末までに全ての国債償還を終える予定であり、「破綻自治体」の汚名を返上し、新たな出発点に立つことになる。
2007年当時、夕張市は観光開発の失敗や人口減少に伴う税収低下が重なり、約353億円の累積赤字を抱えて財政再生団体に指定された。全国で唯一の「財政再生団体」として、厳格な再建計画を余儀なくされ、市職員の給与カット、公共サービスの削減、施設の統廃合など、痛みを伴う施策が続いた。
その後、行政運営の効率化と市民の協力により徐々に財政は改善。特に近年では、鈴木直道市長(当時)のもとで行われた徹底したコストカットや自費による経費負担など、象徴的な“自助再建”の姿勢が注目を集めた。市の支出削減に加え、観光・地域振興による歳入確保も進み、ついに黒字転換を達成。国からの借入金の完済が視野に入った。
再建の過程では、市民生活にも大きな負担がのしかかった。公務員給与は最大で30%削減され、医療・福祉施設の統合により利便性が低下するなど、「痛みの共有」は避けられなかった。しかし、市民の間では「二度と破綻を繰り返さない」という意識が定着し、行政の透明化が進んだことは大きな成果とされている。
一方で、夕張市が直面している課題は依然として深刻だ。2025年現在の人口は約7,000人弱と、ピーク時(1960年代)の10分の1以下。高齢化率も50%を超えており、若年層の定住促進と産業の再構築が急務とされる。市は財政完済後、職員給与の「正常化」を進め、外部からの人材確保や地域経済の活性化を図る方針だ。
専門家の間では、「財政再建はゴールではなくスタート」との見方が強い。北海道大学の地方財政研究者は「夕張は日本の“人口減少先進地”でもある。完済後は財政規律を保ちつつ、地域産業をどう維持・創出するかが問われる」と指摘する。
市では、観光再生や移住促進に向けた新たな取り組みも進行中。旧夕張炭鉱跡地を活用した産業遺産ツーリズムや、自然資源を活かしたリゾート開発の計画が模索されている。近年では映画祭の再興や地域コミュニティのデジタル化も進み、“破綻の記憶”を未来への教訓とする動きが広がっている。
18年に及ぶ再建の歩みは、地方財政再生のモデルケースとして全国の自治体に影響を与えた。国の支援に依存せず、地道な努力で立ち直った夕張市の姿は、人口減少時代を迎える日本全体への示唆を含んでいる。
2026年度、夕張市は正式に国への借金を完済し、「再生自治体」としての新たな章を開く。だがその先には、再建後の“持続可能なまちづくり”という次なる課題が待っている。破綻の痛みを乗り越えたこの小都市が、今度は地方再生の希望としてどこまで進化できるかが注目される。
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