岡山・鏡野町で91歳夫が軽トラ後退事故 止めようとした90歳妻を押しつぶし死亡 高齢者事故への懸念再燃

岡山県鏡野町で、91歳の男性が運転していた軽トラックが誤って後退し、止めようとした妻を押しつぶして死亡させるという痛ましい事故が発生した。警察によると、事故は11月6日午前9時10分ごろ、町内の住宅敷地内で起きた。男性が坂道に車を停めて降りた直後、軽トラックが後退を始め、後方にいた妻を巻き込んだ。妻は直後に倒れ、病院に搬送されたが死亡が確認された。

現場は町の中心部からやや離れた住宅地で、緩やかな下り坂になっていた。警察によれば、男性は車を一時的に止め、庭作業のために降りた直後に車体が動き出したという。ブレーキペダルの踏み忘れ、またはパーキングブレーキが完全に作動していなかった可能性があるとみられている。警察は車両を押収し、ブレーキ装置の機能やシフトレバーの位置、車検履歴などを詳しく調べている。

事故直後、近隣住民が「ドンという音がした後に悲鳴が聞こえた」と通報。消防と警察が約5分後に現場へ駆けつけ、妻を救出したが、頭部と胸部を強く打っており、搬送先の病院で息を引き取った。男性にけがはなかったが、ショック状態に陥り、家族が付き添っているという。

高齢者ドライバーによる住宅敷地内事故は、統計上「交通事故」として扱われるケースが多く、岡山県警によると県内では2025年に入りすでに5件が発生。いずれもブレーキやギア操作の不備による「車体の意図しない移動」が原因とされている。今回の事故も同様のパターンで、警察は「慣れ親しんだ環境ほど油断が生じやすい」として注意を呼びかけている。

専門家の間では、高齢者の運転技術よりも「判断の鈍化」と「身体反応の遅れ」が事故の根本原因になっていると指摘する声が多い。特に敷地内の坂道や車庫前などでは、ギアがニュートラルのまま降車して車が動き出す事例が後を絶たない。国土交通省も今年から、一定年齢を超えたドライバーに対し「自動ブレーキ搭載車以外の運転自粛」を促すガイドラインを検討中だ。

鏡野町の住民の一人は、「ご夫婦ともに仲の良い方で、毎朝散歩していた。まさか自宅でこんなことになるなんて」と声を落とした。地元自治会も、今回の事故を受けて高齢者向けの安全講習を臨時開催する方向で調整を進めている。

岡山県内では2024年以降、75歳以上の免許返納者が急増している一方で、免許を返納した後の生活手段に不安を抱える声も多く、車を手放せない高齢者が依然として多い。警察は「悲劇を繰り返さないためには、家族や地域ぐるみで運転継続の可否を話し合うことが重要」と呼びかけている。

今回の事故は、単なる「操作ミス」では片づけられない現実を突きつけた。便利さと危険が紙一重で共存する中、高齢化社会が進む日本において、安全運転教育と家庭内の意識改革があらためて問われている。

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