日本産冷凍ホタテ、中国向け輸出が2年ぶり再開 北海道から6トン出荷 水産業再生へ第一歩

中国政府による日本産水産物の輸入停止措置が一部解除され、北海道産の冷凍ホタテが約2年ぶりに中国へ出荷された。輸出再開は2025年11月5日、北海道から約6トンの冷凍ホタテが船便で中国に向けて出荷されたもので、福島第一原発の処理水放出を理由に導入された全面禁輸措置以降、初めてとなる。日本の水産業界にとっては、長期にわたる輸出停止からの回復に向けた重要な節目とみられている。

農林水産省によると、今回の出荷は日中両政府が2025年5月に合意した輸出再開手続きに基づくもの。中国側は6月に、福島県をはじめとする10都県(宮城、茨城、栃木、群馬、千葉、東京、新潟、長野、静岡)を除いた地域からの水産物輸入規制を段階的に解除していた。これにより、北海道や青森など北日本の主要産地からの輸出が順次再開可能となった。

鈴木憲和農林水産大臣は7日の記者会見で「北海道産ホタテの輸出再開は、水産業界にとって大きな希望となる。安全性の確保を前提に、今後も中国側との協議を継続する」と述べた。また、青森県産の塩蔵ナマコ約600キログラムが11月10日に航空便で出荷予定であり、青森・北海道両地域の水産業が輸出回復に向けて動き出した形となる。

北海道のホタテ漁業は、日本の水産輸出の中核を担う産業であり、輸出先の約7割が中国市場に依存していた。2023年の輸入停止措置以降、在庫の滞留と価格下落が深刻化し、多くの加工業者や漁協が経営難に陥った。国は一時的に米国や東南アジアへの輸出転換を支援していたが、数量・価格ともに十分な代替には至っていなかった。今回の再開により、北海道内の水産関係者からは「ようやく希望が見えた」と安堵の声が上がっている。

一方、中国側は引き続き福島など一部地域の輸入制限を継続しており、完全な正常化には至っていない。中国外務省の報道官は「日本側が引き続き安全性の説明を行うことが重要」と述べ、段階的な解除を前提とした協議を継続する姿勢を示した。日本政府は今後も科学的根拠に基づく安全性データの提供を行い、残る地域の輸出再開に向けた交渉を進める方針だ。

北海道内では、輸出再開に伴う物流体制の整備も進められている。道庁関係者によると、苫小牧港や釧路港では輸出検査ラインの再稼働準備が進められており、年内には平常運転が可能になる見込みという。さらに、輸出事業者の一部は中国以外の市場にも販路を拡大しており、ASEAN諸国や中東市場などへの輸出も検討されている。

漁業関係者の間では、今回の再開を「水産外交の成果」と評価する声もある。日本政府は処理水放出以降、中国との関係改善を模索しており、経済・貿易分野での対話を通じて輸出回復を目指してきた。関係筋によれば、9月の日中閣僚級会談で輸入規制緩和の具体的スケジュールが協議され、実務レベルでの合意が成立したとされる。外交関係者は「安全基準を共有できたことが信頼回復につながった」と語る。

今後の課題は、輸出先の多角化と国内需要の安定化にある。北海道漁連の担当者は「今回の出荷は象徴的な第一歩だが、安定的な輸出ルートを確立しないと再びリスクに直面する」と述べた。政府は水産庁を中心に、冷凍設備や保管体制の支援策を強化し、国際市場での競争力回復を図る方針だ。

2年ぶりの再開となった日本産ホタテの対中輸出は、単なる経済取引にとどまらず、日中関係改善の指標としても注目されている。今後の継続的な輸出が実現すれば、地域経済の再生とともに、両国の経済協力関係にも新たな展望を開く可能性があるとみられている。

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