
福岡ソフトバンクホークスなどで捕手として活躍した元プロ野球選手・山下斐紹(やました・あやつぐ)容疑者(32)が、名古屋市中川区の居酒屋で救急隊員に暴行を加えたとして、公務執行妨害の疑いで現行犯逮捕された。7日夜、体調不良を訴えた山下容疑者の通報を受け救急隊が出動したが、到着時に泥酔状態の同容疑者が暴れ、対応にあたった隊員を突き飛ばしたとされる。警察はアルコール検査を実施し、呼気から基準値を大きく超えるアルコール濃度を検出した。
捜査関係者によると、山下容疑者は居酒屋で複数人の知人と飲酒しており、午後10時ごろに「気分が悪い」と訴え、店員の通報で救急車が呼ばれた。救急隊が駆けつけたところ、山下容疑者は激しく酔っており、救急搬送を促す隊員に「触るな」「勝手にするな」と声を荒げ、隊員の胸を押して転倒させたという。警察官が駆けつけ、その場で現行犯逮捕された。救急隊員は軽い打撲を負った。
取り調べに対し、山下容疑者は「酒に酔っていてよく覚えていない」「そんなに強く押していない」と供述しており、一部の暴行行為を否認しているという。名古屋市警は、事件当時の飲酒量や同席者からの聞き取りを進め、詳しい経緯を調べている。
山下容疑者は2024年9月、名古屋市内でコカインを所持していたとして麻薬取締法違反の罪で逮捕・起訴され、今年春に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受けたばかりだった。更生を誓うコメントを出してからわずか1年余りでの再逮捕となり、周囲からは「復帰の道を自ら閉ざした」と落胆の声が上がっている。
現役時代の山下容疑者は、2010年に福岡ソフトバンクホークスにドラフト1位で入団。捕手として強肩を誇り、将来を嘱望されたが、度重なるケガやチーム事情により一軍定着には至らなかった。その後、楽天イーグルスや中日ドラゴンズの練習生を経て、2022年に引退。SNSでは野球教室の運営やトレーナー活動を行っていたが、2024年秋の薬物事件で活動が事実上停止していた。
プロ野球OBからは「心身のバランスを崩していたのではないか」「再起を誓っていた矢先の事件で残念」との声も出ている。SNS上では「またか」「野球界の信頼を損なう行為」「救急隊に暴行は許されない」など、厳しい意見が相次いでいる。一方で、「依存症や精神面の治療を受けるべきだった」と更生支援の必要性を訴える投稿も見られた。
名古屋市消防局は、「現場で暴力行為が発生するのは極めてまれだが、隊員の安全確保を最優先に対応している」とコメント。警察は酒気帯び暴行の経緯を慎重に調べるとともに、事件当時の防犯カメラ映像などを分析している。今後、山下容疑者のアルコール依存や薬物使用歴との関連も焦点となる見通しだ。
野球界では、近年元選手による薬物や暴行事件が相次いでおり、NPB関係者は「セカンドキャリアのサポートを強化しなければならない」と危機感を募らせる。今回の事件は、引退後の支援体制やメンタルケアのあり方にも一石を投じることになりそうだ。
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