東名高速道路や中央自動車道などで発生した大規模なETC(自動料金収受システム)障害に関し、管轄する中日本高速道路(NEXCO中日本)は9日、これまでにおよそ2万4000人から通行料金の後払い申し出があったことを明らかにした。障害発生から復旧まで実に38時間。利用者には事前の説明もなくETCレーンが開放され、後日支払いの手続きが求められたが、「説明責任も果たさず金は取るのか」とする苦言が相次いでいる。
ETC障害は6日午前0時半ごろに始まり、復旧したのは7日午後2時。東京、神奈川、山梨、静岡、愛知、岐阜、三重、長野の計8都県にある106か所の料金所やスマートインターチェンジでETCが使えなくなり、料金所のバーを開放するという異例の措置が取られた。中日本高速側は「支払義務は通行時点で発生しており、後払いは当然の措置」として、約款に則った正当な請求であると説明している。
一方で、SNS上では利用者の不満が噴出している。「渋滞によって飛行機に乗れなかった。宿もキャンセルになったのに、それは自己責任か」「そちらのシステム障害で支払い不能だっただけなのに、なぜ客側だけが一方的に責任を負わねばならないのか」といった声が相次ぎ、JR特急であれば2時間遅延で特急料金が返金されるという制度との比較も持ち出された。
中には「すぐにレーンを開けたのだから無料通行でよかったのでは」といった指摘もあり、今回の障害対応が十分に利用者目線でなされていたかどうかが問われている。実際、編集部が取材を試みた30代の男性会社員は「重要な商談がありましたが、渋滞で間に合いませんでした。結局その商談先とはご縁がありませんでしたけどね(笑)」と、どこか諦め交じりに語った。失われたのは金額に換算できる通行料金ではなく、信用や機会そのものである。
中日本高速の供用約款では、通行した利用者に支払い義務があることを明示し、障害時においても「別に定めるところにより」料金の徴収が可能であるとしている。また、利用者が支払いを不当に免れた場合には、その金額の2倍に相当する割増金の請求も可能としており、法律的には同社の請求に大きな齟齬はない。
だが、公共インフラを担う企業としての社会的責任をどう果たすかは、法律とは別の次元の問題である。ETC専用レーンに依存した高速道路の運用体制、システム障害への備え、トラブル発生時の代替手段や告知体制、そして利用者への誠意ある対応――どれもが今回、後手に回った印象は否めない。
鉄道や航空であれば、遅延時の払い戻しや宿泊費補助といった補償措置があるのが通例だ。それに対し、今回の中日本高速の姿勢は、「お詫びはするが支払いはしてくれ」の一点張り。信頼関係を維持するには、約款を盾にして利用者を一括りに責任ある“債務者”と見なすだけでは不十分ではないか。
公共性を帯びた高速道路という社会インフラにおいて、トラブル発生時に必要なのは料金の回収よりも、まずは説明と謝罪、そして何より“利用者が納得できる理由”であろう。今回の後払い要請が、企業と利用者の信頼関係に亀裂を生まないことを願うばかりだ。
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