横領事件が企業経営を直撃 被害届提出に課題も
岡山市内の貿易関連企業で、従業員が会社の資金を不正に流用していたことが判明した。同社が受けた被害額は約2,200万円に上るが、現在のところ被害届は提出されておらず、事件の全貌は不透明なままだ。内部情報提供をきっかけに、本紙記者が取材を行った。
取引先からの問い合わせで露見
事件の発端は、2024年11月22日、同社の取引先である東京のEC関連企業からの連絡だった。「利用料が入金されていない」との指摘を受け、社内調査を実施した結果、特定の法人口座から多額の資金が引き出されていたことが明らかになった。この時点で当該口座にはわずか1万0022円しか残っていなかった。
同社代表取締役社長のN氏は「別の法人口座に約5億6,000万円の資金があるため、経営の継続には支障はない」と説明する。しかし、資金の不正流用という重大な問題に直面し、社内の士気や取引先からの信用に大きな影響が出ていることを認めた。
被害届は出せず相談段階
本件について、N社長はすでに弁護士に相談を行ったものの、被害届の提出は実現していない。その理由として、「警察から『金額が小さく証拠が不十分』と指摘され、現時点では受理が困難と言われた」と説明。
約2,200万円もの被害額を「少額」と評価される現状に対し、N社長は「納得しがたい」との思いを吐露した。また、不正に関与したとみられる従業員K氏について、役職や具体的な個人情報に関する質問には一切回答せず、詳細の解明は進んでいない。
業務上横領の法的責任とは
業務上横領は、刑法第253条により「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される犯罪だ。特に企業の資金を私的流用する行為は、信頼関係の著しい侵害として厳しい非難にさらされる。
しかし、実際には被害届の受理や立件に至るまでのハードルが高いのが現状だ。犯罪白書によると、令和3年の横領事件の認知件数は1万3,028件に上るが、その背後には数多くの未解決案件が潜んでいると推測される。
再発防止策と社会的責任
N社長は「社内監査体制を強化し、再発防止に向けた取り組みを進める」と述べる一方、K氏による不正行為の背景や金の用途については明らかにしなかった。本紙の取材によると、不正に引き出された資金はK氏の個人的なローン返済に充てられた可能性があるという。
同社は、事件を契機に信頼回復に向けた対応を模索しているが、課題は山積している。警察が被害届を受理し、真相解明に向けた捜査が進むことを期待する一方で、企業としても公正な調査と責任ある対応が求められる。
問われる危機管理意識
今回の事件は、企業経営における資金管理の重要性を改めて浮き彫りにした。経営者にとって、内部不正は経済的損失以上に、取引先や従業員との信頼関係に深刻なダメージを与える問題だ。
岡山市の一企業で起きた横領事件だが、その教訓は全国の企業にとって無視できない。内部監査の徹底、法的対応の迅速化、そして従業員教育の強化など、多角的な取り組みが求められる中で、信頼を取り戻すための道のりは険しい。 #横領 #ビジネス #岡山