読売・毎日新聞、蒲郡市を提訴 職員イントラネットでの記事無断共有に8300万円請求

新聞業界と地方自治体が、前例の少ない法廷闘争を迎える。

読売新聞グループ本社と毎日新聞社は、愛知県蒲郡市が市職員向けイントラネット上に無断で新聞記事を共有していたとして、東京地方裁判所に損害賠償を求める訴訟を起こした。請求総額は約8300万円に上る。

訴状によれば、蒲郡市は取材記事を両社の許諾なく複製・共有し、数千人の職員がアクセス可能な状態にしていたという。読売側は約6100万円、毎日側は約2200万円を求め、「報道機関の正当な著作権を軽視する行為だ」と主張している。

一方、市は違法性を否定。著作権法第42条に定められた「行政機関による複製の特例」を根拠に、「行政内部での情報共有に過ぎず、商業的利用ではない」と反論している。

これに対し、原告側は「市政に直接関係のない記事まで転載しており、公益利用の範囲を超えている」と指摘。市が内部資料と称して配信した記事の一部には、全国ニュースや経済記事も含まれていたという。

争点は“公務の範囲”と“公衆送信の定義”に及ぶ。

職員数千人規模のイントラネット閲覧が、一般公衆への公開と同等とみなされるか否か。司法の判断次第では、全国の自治体が行っている類似運用にも影響を及ぼす可能性がある。

過去には教育機関や図書館が新聞記事をコピー・配布した例で著作権侵害が認定されたことがある。今回も同様の判断が下されれば、行政による情報共有の慣行そのものが見直しを迫られる公算が大きい。

読売・毎日両社が共同で自治体を提訴するのは極めて異例。

報道業界では「AI要約や自動転載の普及で、著作権を軽視する風潮が拡大している」との危機感があり、今回の訴訟は“線引きの明確化”を求める試金石となる見方もある。

蒲郡市広報担当は、「訴状の内容を精査中であり、適切に対応する」とコメント。

判決の行方次第では、全国自治体のイントラネット運用や報道機関との関係に波紋が広がることは避けられそうにない。

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