
自民党の小野田紀美参議院議員が、AI生成技術を悪用した偽動画の拡散に対し、X(旧Twitter)上で厳しい言葉を投げかけた。
問題の動画は、小野田氏が国会の場で激昂し絶叫しているように見せかけたもので、実際には存在しない映像であることが確認されている。投稿者は編集ソフトとAI音声生成を組み合わせ、本人の発言のように錯覚させる巧妙な手法を用いていたという。
小野田氏は9日の投稿で、「このような偽動画は明確な悪意をもって世論を攪乱し、政治不信を助長するものだ」と強く非難した。さらに、「再生数やフォロワーを稼ぐために人の名誉を傷つけ、国民の感情を弄ぶことは許されない」と述べ、AIの技術的進歩を盾にしたモラル欠如を指摘した。
ディープフェイクを巡る問題は、近年国内外で深刻化している。特に選挙期間中や政治的争点を巡る局面では、虚偽情報が一瞬で拡散し、修正が追いつかない事態が相次ぐ。総務省が今年まとめた報告書では、「AI生成物による誤情報拡散は民主主義の根幹を揺るがす」と警鐘を鳴らしており、選挙干渉・風評操作への懸念も高まっている。
小野田氏は、現職として知的財産戦略の立案にも関わっており、投稿の中で「法整備と倫理教育の両輪でAIの時代を迎えるべき」との立場を明確にした。政府内でも、生成AIを用いた虚偽映像の作成・拡散に刑事罰を設ける案が議論されており、悪質なケースでは業務妨害罪や名誉毀損罪の適用も視野に入っている。
一方で、ネット上では「AI規制は表現の自由を縛る」との懸念もあり、技術革新と法的制限の線引きが難しい現実も浮き彫りになっている。だが小野田氏は、政治家としての立場から「事実と虚構の区別がつかない時代に突入している今こそ、個人のリテラシーが問われている」と強調した。
SNSを介して瞬時に広まる誤情報は、国民の政治的判断を左右しかねない。特に生成AIは映像・音声ともにリアルで、人間の目を容易に欺く。今回の偽動画も、数時間のうちに拡散され、真偽を知らぬまま共有したユーザーが多数確認された。
政府は今後、AI生成物への透かし義務化や識別ラベルの導入を検討しており、総務省・内閣府・経産省の合同会議が近く開催される見通し。
小野田氏は「技術を止めることはできない。しかし、技術を人が使う以上、人間の倫理が問われる」と述べ、AI時代における「責任ある発信」の必要性を訴えた。
AIの進化が人間社会に何をもたらすのか。利便性と危険性の境界が曖昧になる中で、今回の小野田氏の発言は、単なる政治的警告ではなく、情報時代を生きるすべての国民への問いかけとも言える。
「真実を疑う目を持つことが、民主主義の最後の防壁になる」――その言葉が、今後の議論の起点となるか注目される。
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