
石破茂首相が率いる内閣は、10月21日午前の閣議で総辞職を正式に決定し、在職386日間にわたった政権運営を終えた。石破首相は閣議後、「国民の負託に十分に応えられなかった責任を痛感している」と述べ、辞任の意向を明らかにした。後継をめぐっては、自民党総裁選で新たな指導者が選出される見通しで、政治の流れが大きく転換点を迎えている。
少数与党での政権運営と主要政策
石破内閣は2024年9月に発足。少数与党のもとで政権運営を続ける中、自衛官の処遇改善、防災体制の強化、米価下落への対策、高校授業料の無償化拡大など、生活と安全保障の両面で複数の政策を打ち出した。特に防衛・災害対策を柱とする「国土守備プラン」は、地方自治体からも一定の評価を受けていた。
また、2025年度予算の編成では、前倒しでの成立を実現。財政健全化と成長戦略の両立を目指し、農業支援や防衛装備品の国産化促進などの施策を盛り込んだ。経済面では、物価上昇が続く中で低所得層支援のための給付金制度を導入し、国民生活の安定を図った。
一方で参院選敗北と支持低迷
しかし、石破政権は2025年夏の参議院選挙で大敗を喫し、これが辞任の最大の契機となった。野党は「改革の停滞」「与党内調整の遅れ」を厳しく追及。選挙後も支持率の回復が見られず、連立与党内からも政権交代を求める声が強まっていた。
特に、防衛費増額に伴う財源確保をめぐる議論や、経済対策の遅れに対して国民の不満が高まり、「期待されたリーダーシップが十分に発揮されなかった」との指摘が相次いだ。また、地方創生政策の一部では成果が限定的にとどまり、地域格差の是正には至らなかったとされる。
国民・専門家の評価 二分する世論
辞任発表後、世論は賛否に分かれた。支持派は「誠実で現実的な政治姿勢だった」「防災と防衛を重視した政策は着実な成果を出した」と評価。一方、批判派は「リーダーとしての決断力に欠けた」「政権基盤が弱く、党内融和にも失敗した」と厳しい意見を寄せた。
政治評論家の間でも意見が割れており、ある識者は「短期政権ながらも、行政改革や防災対策の制度設計に一定の足跡を残した」と評価。一方で、「野党との協調姿勢を強調しすぎた結果、党内保守層との軋轢を招いた」と分析する声もある。
自民党内の動きと後継政権の焦点
石破氏の辞任を受けて、自民党は新総裁選挙を実施する見込み。高市早苗政調会長、茂木敏充幹事長、河野太郎前外相らが有力候補に挙がっている。次期政権では、日米関係の再構築や経済安全保障の再設計、地方財政支援などが課題となる見通しだ。
一方、野党側では立憲民主党の泉健太代表が「自民党の内輪の人事ではなく、国民に信を問うべき」として衆院解散・総選挙の実施を要求。政界全体が流動化する可能性も出ている。
石破氏の退陣コメントと象徴的な場面
石破首相は退陣の際、官邸前で報道陣の質問に答え、「誰のための政治かを常に考えてきた。結果として国民の期待に応えきれなかったことが痛恨だ」と述べた。退任の花道を飾ったのは、自身の故郷・鳥取県の支援者が贈ったミヤクミヤカラー(青と白を基調とした花束)で、その映像がニュース各局で報じられた。
また、与党内の関係者によれば、石破氏は退陣後も政策研究会の顧問として安全保障や防災政策の提言を続ける意向を示しているという。
政権交代の節目に問われる政治の信頼
今回の総辞職は、386日という短期政権ながらも、コロナ後の経済回復や安全保障政策の転換期にあった日本政治に一つの節目を刻んだ。専門家は「石破政権は地味ながらも政策本位の姿勢を貫いたが、党内の求心力を維持できなかったことが命取りとなった」と分析。
今後の政権は、分断する世論をどう再統合し、国民の信頼を取り戻すかが問われる。石破氏の退陣をめぐる評価は、時を経てなお議論の対象となりそうだ。
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