
静岡県伊東市の田久保真紀市長が、新たに導入された「経歴証明義務化ルール」に基づき、高校卒業証明書を市に提出したことが明らかになった。これを受け、市は公式ホームページ上の市長プロフィールを更新し、最終学歴を「高校卒業」と明記した。今回の手続きは、市長や副市長など主要公職者の経歴を公的に裏付ける初の事例となった。
■学歴詐称疑惑をきっかけに新制度導入
伊東市によると、この新ルールは2025年春、学歴詐称に関する一部報道をきっかけに導入されたもの。市民から「公職者の経歴をより正確に明らかにしてほしい」との声が相次いだことを受け、市が職員倫理条例の一部を改正し、証明書提出を義務化した。
対象は市長、副市長、教育長などの幹部職に加え、採用時の学歴記載が求められる職員も含まれる。市は「経歴の透明化と市民への説明責任を強化することが目的」としており、田久保市長が初の適用対象となった。
■田久保市長「信頼回復の一歩に」
市長室を通じて公表されたコメントで、田久保真紀氏は「公務に携わる者として、正確な情報の提示は当然の責任。今回の対応を通じて、市民の信頼をさらに深めていきたい」と述べた。
田久保氏は静岡県内の高校を卒業後、民間企業勤務を経て市議会議員に当選。2022年の市長選で初当選し、現在2期目を務めている。これまでの市長公式プロフィールには最終学歴の記載がなく、一部で「経歴の不明瞭さ」が指摘されていた。今回の更新により、学歴欄が明確化された形となる。
■市民からは賛否の声も
市内では「説明責任を果たしたのは評価できる」とする意見がある一方で、「学歴の問題ではなく、市政の透明性全体をどう確保するかが重要」といった声も聞かれた。市民の50代男性は「小さな市だからこそ、首長の人柄と誠実さが大事。疑念を残さない対応は正しい」と話す。
SNS上でも反応は広がっており、「証明書提出まで求めるのは過剰では」との意見や、「全国の自治体にも広げてほしい」といった肯定的なコメントが並んでいる。
■全国的にも珍しい「経歴証明制度」
公職者の学歴や経歴に関しては、地方自治体によって対応が分かれている。多くの自治体では立候補時に提出する経歴書の公開にとどまり、証明書の提出を義務化している例は全国的にも珍しい。総務省によると、2024年度時点で同様の制度を設けている自治体は全国で10件に満たないという。
伊東市の担当者は「近年、インターネット上で公職者の経歴に関する誤情報が拡散する事例が増えており、誤解を防ぐ目的もある」と説明する。市は今後、職員採用や議員報告資料にも同制度を拡大する方針を検討している。
■透明性向上が全国に波及する可能性も
専門家の間では、今回の取り組みが地方行政全体の信頼性向上につながる可能性があるとの見方も出ている。地方行政研究所の藤川正明准教授(行政学)は「地方首長の経歴は市民にとって重要な判断材料。情報を裏付ける制度は、選挙の公正性や行政透明化の観点からも意義が大きい」と指摘する。
その一方で、「証明義務が過度になれば、政治参加のハードルを上げる懸念もある。制度設計には慎重さが必要」との課題も挙げた。
■市政の信頼をどう守るか
田久保市長は、2025年度の市政方針演説で「市民との信頼を基礎に、より開かれた行政を進める」と発言しており、今回の経歴証明提出もその延長線上にあるとみられている。市は今後、職員人事や議会提出資料の公開基準の見直しにも着手する予定。
伊東市では、人口減少や観光振興、財政再建といった課題を抱える中、市民の信頼をどう維持・回復していくかが今後の焦点となる。
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