
政府は2025年11月3日、秋の叙勲受章者を発表した。各界で功績を残した3963人が選ばれ、経済学者で元総務相の竹中平蔵氏(74)が旭日大綬章を受章した。竹中氏は小泉純一郎政権下で経済財政政策担当相・総務相を歴任し、構造改革や規制緩和を推進した実績が評価されたとされる。一方で、SNS(旧Twitter、現X)上では竹中氏の過去の政策に対する批判も相次ぎ、賛否両論が広がっている。
■ 経済政策改革の象徴としての叙勲
竹中氏は慶應義塾大学教授を経て政界入りし、2000年代初頭の小泉政権で「構造改革なくして成長なし」というスローガンのもと、郵政民営化や市場原理の導入を進めた中心人物である。政府は今回の叙勲理由として、「長年にわたる経済構造改革の推進、及び国際経済学への貢献」を挙げた。
旭日大綬章は、国家または公共に対して特に功労のあった人物に授与される勲章の中で最上位に位置するものの一つであり、閣僚経験者など政治・行政分野での貢献が評価対象となることが多い。
しかし、同氏の政策は常に賛否を呼んできた。特に派遣労働の拡大や非正規雇用増加の背景に、竹中氏が関与した労働規制緩和があるとする批判は根強い。今回の受章発表を受け、X上では「改革の成果よりも格差を拡大させた人物に勲章とは」「賛成派と反対派の評価が極端に割れる」など、複雑な反応が見られた。
■ 批判と評価、両極化する世論
今回の受章に関しては、経済界・学界からは肯定的な意見も少なくない。経済ジャーナリストの一部は「日本経済の硬直性を打破しようとした功績は大きく、国際的な評価も高い」と指摘する。一方で、社会学者らからは「構造改革は一部の富裕層に利益を集中させ、中間層の没落を招いた」との批判も根強い。
SNS上では、受章発表後わずか数時間で「竹中平蔵」「旭日大綬章」がトレンド入り。賛否両論が交錯し、「改革を進めたリーダーとして当然」「働く現場を混乱させた張本人」など、意見が真っ二つに分かれている。特に若年層の投稿では、「格差の象徴として記憶している」「今の雇用不安の出発点」とする声も目立った。
■ 文化・芸術分野の受章者も話題に
同日の発表では、文化・芸術・学術分野の功労者にも多数の受章があった。ゲームクリエイターの堀井雄二氏(『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親)や、漫画家の永井豪氏(代表作『デビルマン』『マジンガーZ』など)が受章者に名を連ね、こちらもSNS上で大きな反響を呼んでいる。堀井氏の受章については「日本のゲーム文化を世界に広めた功績がようやく評価された」との称賛が相次ぎ、永井氏に対しても「日本のポップカルチャーの礎を築いた人物」として祝福の声が広がっている。
これらの文化功労者の叙勲は、政府が近年重視する「ソフトパワー外交」「文化輸出」方針の一環としても注目される。海外では日本のアニメ・ゲーム文化が経済的にも大きな影響を持つようになっており、こうした叙勲による国内外での文化的評価の向上が期待される。
■ 秋の叙勲制度と社会的意義
日本の叙勲制度は、国家・社会に顕著な功績を挙げた人々を顕彰するもので、春と秋の年2回発表される。今回の秋の叙勲では、旭日章・瑞宝章を中心に3963人が選ばれた。うち女性受章者は約8%で、前年とほぼ同水準となった。分野別では、行政・教育・医療・文化・産業など幅広い分野からの選出となっている。
叙勲制度は、長年の功労を称えることに主眼が置かれている一方で、受章者の社会的背景や過去の政策・発言をめぐって議論が起こることも多い。竹中氏のケースは、まさに「改革の功績」と「社会への影響」の両面が問われる象徴的な例といえる。
■ 総括 ― 政策評価と歴史の整理
今回の竹中氏の受章をめぐる反応は、単なる個人への賛否を超え、2000年代以降の日本経済政策をどう評価するかという問題を映し出している。構造改革の成果として、財政健全化・企業競争力向上を評価する意見がある一方で、雇用の不安定化や社会格差の拡大という負の側面を指摘する声も多い。
受章そのものは政府の公式判断によるものだが、社会の反応がここまで二分されるのは、政策の影響が現在もなお続いている証拠でもある。叙勲が「功労の象徴」として機能するのか、それとも「過去の再検証の契機」となるのか——今回の秋の叙勲は、日本社会にとってその問いを突きつける出来事となった。
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