NHKとPaidy装う詐欺メールが氾濫 巧妙化する偽装サイトと「日本語の粗」との奇妙な落差

「2025年11月中旬以降、NHKや後払い決済サービス「Paidy」を名乗る詐欺メールが全国で急増している」

そんな情報が、あしたの経済新聞編集部に立て続けに寄せられている。詐欺メールは珍しい話ではないが、今回の波は規模・速度・巧妙さのいずれをとっても過去の定番手口とは比べものにならず、読者からは「いよいよ詐欺の季節か」と半ば諦めに似た声まであがるほどだ。

編集部が11月1日以降に受け取った情報提供は、NHK関連が94件、Paidy関連が86件。日々増え続けており、詐欺師の「働き方改革」とは程遠い、旺盛な活動ぶりを示している。
特にNHK偽装については、同局が受信料未納者への民事訴訟強化を大々的に発表した直後というタイミングも手伝い、詐欺師にとっては格好のビジネスチャンスとなったようだ。実在する不安に便乗するのは常套手段とはいえ、まさに火事場泥棒のような素早さである。

もっとも、近年の詐欺界隈で存在感を放っているのはPaidyを名乗る一派だ。同サービスの利用者層は広く、AmazonやQoo10などで気軽に使える利便性から、詐欺師からも目のつけどころがいい決済サービスとして注目されているのかもしれない。筆者の個人メールアドレスにも、毎年のようにPaidy偽装メールが押し寄せる怪奇現象が起きており、その出現周期はセミより読みにくい。

こうした詐欺メールの厄介さは、表面的には本物そっくりを装いながら、その裏で稚拙な日本語が散見されるという、真面目なのか手抜きなのか判断に困るアンバランスさだ。

(画像1)筆者に届いたPaidyを騙る詐欺メール


例えば、筆者のもとに届いた件名は「【重要】ペイディが利用停止のお知らせ」。
「ペイディが利用停止」などという日本語は日本語検定のどの級にも出てこないはずで、むしろこの一文だけで不信感がMAXまで跳ね上がる。詐欺サイトの完成度は驚くほど高いのに、メールタイトルだけで正体が露呈するという詰めの甘さは、もはや芸術の領域といえる。

一方、詐欺師が本領を発揮するのがURL偽装である。
Paidyの正規URL「https://my.paidy.com/」を文面に記載しつつ、実際のリンク先は巧妙に偽サイトへ差し替える手口で、リンク先の行き先は似ているどころか完全に瓜二つのデザイン。昨今、Xの広告で頻出する「Gooニュース」模倣サイトですらまだ可愛げがあるレベルで、Paidy偽装サイトの再現度は異常なほど高い。

(画像2)Paidyを模倣した詐欺サイト
(画像3)Paidy公式サイト

実際にリンク先を調べたところ、Paidyとは無関係の第三者のサーバーに誘導されており、入力フォームも本物を模して精巧に作られていた。
「ここまで手間をかけるなら正業で働けばいいのに」と思うのは一般人の感覚で、詐欺師にとっては、正規サイトに似せるスキルだけ極端に伸びたという、よく分からない才能の発揮である。

(画像4)筆者のもとに届いた偽メールをGoogleドキュメントに貼り付けたところ、文中の https://my.paidy.com/ にハイパーリンクが設定され、偽サイトへ誘導する仕組みであることが判明したことを示すスクリーンショット

だが、詐欺メールの弱点ともいえる日本語の不自然さが、まだしばらくは防波堤として機能しそうだ。送信元ドメインが「.cn」だったことから日本国外の作り手とみられるが、文章の構造や語彙の選択は、いかにも外国語話者が頑張って書いた日本語のそれである。詐欺サイトの精巧さと文章の雑さというギャップが、利用者を寸前で踏みとどまらせる最後の紐になっているにすぎない。

もっとも、AI生成技術が一般化する近年、詐欺師が本気で自然な日本語を生成し始めれば、この日本語の粗さという唯一の救いは消滅するだろう。筆者としては、まっとうなビジネスにAIを活用してほしいものだが、残念ながら犯罪者の「技術吸収速度」が法整備より早いのは歴史が証明している。

なお、余談ながら、筆者は以前別件の詐欺被害で岡山県警に相談した際、門前払いに近い扱いを受けた経験がある。それ以来、同県警を信用していないのだが、今回のように詐欺が高度化する時代、捜査機関の姿勢がこのままで良いのか。という疑念だけは、どうしても拭えない。

いずれにせよ、メールのタイトルが拙くとも、リンク先が本物そっくりであれば人は簡単に騙される。
「本物に似せてくる偽物」と「本物より気の利かない日本語」の組み合わせが生み出す落とし穴は、決して侮れない。
詐欺師がさらに日本語力まで磨けば、いよいよ見分けはつかなくなる。
今こそ、利用者側も「自衛意識」という名のアップデートが求められていると言えよう。

記者:荷品智樹

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