【シュシュ女】“共感”が暴走する時代 KCONスタッフ炎上で浮き彫りになったファンの教養崩壊<<なぜ低知能が量産されたのか>>

「感動体験」を標榜する韓流イベントが、SNS時代の“断罪社会”の縮図と化している。

韓国音楽の祭典「KCON Japan 2025」の会場で、撮影された動画がX(旧Twitter)上に投稿された。投稿者は「意味もなくオタク急かして笑ってるスタッフを二度と雇わないで下さい」と強い言葉を添え、当該映像は瞬く間に拡散。ファンの間に怒りが広がった。

問題視されたのは、スタッフの態度だけではない。ネット上では、映像から人物を特定しようとする動きが加速し、投稿からわずか数時間で、当該スタッフのSNSアカウントと見られる個人情報が拡散されるに至った。まさに“群衆によるリンチ”の様相を呈している。

このスタッフを派遣していたのは、東京都豊島区に本社を構える「株式会社スタートポイント」。警備業(東京都公安委員会認定 第30004686号)を営む同社だが、今回の件ではスタッフ教育および安全配慮義務の不履行が疑われている。

組織運営に詳しい江東区在住の弁護士、坂田氏は次のように指摘する。

「イベント運営会社には、スタッフに対する適切な職務指導・研修の実施とともに、従業員が不当に晒されないようなリスク管理義務もあります。今回のように、個人が特定され、それが原因で精神的・社会的ダメージを受ける場合、雇用者側の安全配慮義務違反が問われる可能性があります」

また、今回のような野次馬的な特定行為についても、「名誉毀損やプライバシーの侵害とされる余地は十分にある。たとえ映っていた人物が当該スタッフであっても、それを『公に晒すことが公益に適う』とは言い難い」とも警鐘を鳴らす。

さらに、坂田氏は動画撮影の可否にも言及。「本来、イベント会場内での無断撮影や録音は、主催者側が明確に制限を設けるべきで、肖像権や著作権などの問題を含めた管理体制が欠如していた可能性がある」と述べた。

今回の一件をめぐっては、SNS上に「オタクなんだからそれくらい耐えろ」「金払ってまた並べばいい」といった声も目立ち、他方で「この運営は酷すぎる」といった主催側批判も多く寄せられている。だが、感情の昂りのまま動画を撮り、特定し、晒す――この一連の流れが“正義”として容認されている現状にこそ、大きな危機感を覚える。

ファンの多くは10代後半から20代。動画ひとつで人を「処罰」しようとする手法が、いとも容易く当たり前になっている様子は、SNS時代の倫理教育が空洞化している証左ともいえる。

イベントとは、本来、出演者と観客、運営側の信頼で成立する舞台だ。KCONのような大規模催事で、感情が剥き出しとなり、互いに牙を剥き合うような環境が形成されつつあるとすれば、それは「文化の退化」とも呼ぶべき現象ではないか。

坂田弁護士も「主催者・運営会社は、謝罪や再発防止策の提示では済まされない段階にきている。法的責任を回避するには、組織としての安全配慮義務を明確化し、現場レベルでの運用に落とし込む必要がある」と警告している。

イベントを支えるのは、演者ではなく、観客でもなく、秩序と責任である――。この原則を忘れた瞬間、あらゆる“感動”は、ただの騒乱へと変貌する。

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