「破産」この二文字には、どこかしら「すべてがリセットされる」という響きがある。しかし、現実はそう甘くない。特に、賠償金という名の「お荷物」は、破産手続きが始まっても、なかなか手放させてはくれない。法的には「非免責債務」と呼ばれるこの存在が、破産者にとって厄介な宿題となるのだ。
そもそも破産法は、経済的に行き詰まった個人や企業を救済するための制度である。借金の山に押し潰されそうになった者が、一度ゼロ地点に立ち戻るためのセーフティーネット。しかし、このネットはすべてを受け止めるわけではない。網の目をすり抜け、なおぶら下がり続けるものがある。その筆頭が、賠償金である。
たとえば、交通事故を起こして相手に多大な損害を与えた場合。裁判所が賠償金の支払いを命じたとして、その後に破産しても「はい、それでは免除します」とはならない。過失が重い場合は特に「社会的責任を全うせよ」という法の厳格な声が響くのである。
法の壁は高く、逃げ道は狭い
破産法第253条に目を通すと、「故意または重過失により他人に損害を与えた場合の損害賠償債務は免責されない」とある。この一文こそが、賠償金を抱えた破産者を立ち止まらせる鉄の扉だ。意図的に悪事を働いた結果の債務は言うに及ばず、「うっかり」や「つい出来心で」という言い訳も通じない。
では、「逃げ道」は本当にないのだろうか? 実は例外も存在する。たとえば、債権者が特に寛容な場合や、訴訟を起こさなかった場合などである。しかし、そのようなケースは稀。大半の賠償金は、破産手続きを経てもなお、債務者の肩に重くのしかかる。
身を守るための知恵
こうした現実を前にして、破産を検討する者はどう対処すればよいのか。まずは、「賠償金が免責されることは基本的にない」という前提を理解することが重要だ。そして、事前に弁護士へ相談し、状況を正確に把握する必要がある。
加えて、賠償金が発生するリスクを最小限に抑える努力も不可欠だ。たとえば、自動車保険の加入は当然として、日頃から法令遵守の意識を高めることが求められる。「何かあっても保険があるから大丈夫」という油断は禁物である。保険がカバーしきれない部分が、非免責債務として残る場合があるからだ。
破産と向き合う覚悟
破産手続きが始まると、多くの債務は法的に帳消しとなる。しかし、その恩恵がすべての債務に適用されるわけではない。賠償金のような「特別扱い」の債務は、社会的責任の象徴とも言える。
過去の過ちから目を背けず、正面から向き合う姿勢が求められる。破産は人生のリセットではなく、新たな責任を背負う契機ともなり得るのだ。賠償金を免れようとする試みは、「正義」という名の看板を掲げる法の前では、ことごとく跳ね返される。
つまり、破産を考える際には、賠償金の行方にも注意を払う必要がある。何かあれば、すぐに専門家に相談することを強く勧める。破産は「終わり」ではなく、新たな章の始まりなのだから。
編集部 : 芝﨑(学友商業日報社 代表)
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