インターネット通販にスマホゲーム、そして“買ってから払えばいい”という甘い誘い――。後払い決済の便利さに身を任せた消費者たちの中には、ある日突然、自宅ポストに“見覚えのない封筒”を発見する者もいる。中身は、「お支払いを確認できませんでした」という無機質な督促状。夢のような買い物は、思わぬ現実を連れてくる。
「2,980円なんて、いつでも払えると思ってたんですよ」
そう語るのは、東京都内に住む30代の会社員男性。通販サイトで衣類を後払いで購入したが、仕事の忙しさにかまけて支払いを忘れ続け、気がつけば約2カ月が経過していた。スマホには毎日のように「お支払いのお願い」が届き、無視を決め込んでいたある日、ポストには厚手の封筒。そして、その差出人は弁護士事務所だった。
「え、あの買い物ってそんな大ごとだったのかと…」と彼は青ざめたという。
後払い決済はあくまで“信用”に基づく契約。利用者の信用情報は逐一管理されており、支払いの遅延が一定期間を超えると、個人信用情報機関に「事故情報」として登録される。こうなれば、クレジットカードの新規発行、ローン契約、果ては携帯端末の分割購入まで、あらゆる“審査”が壁になる。
弁護士法人・響によれば、「弁護士委託前通告」は“ラスト警告”とも言える最終段階で、ここを超えると少額訴訟や支払督促といった“法の鉄槌”が振り下ろされるという(参考:https://hibiki-law.or.jp/debt/hensai/taino/19401)。
支払う意思はあるが財布がカラ――そんな“資金ショート型滞納者”もまた、例外ではない。大阪府内で一人事業を営む40代の女性は、コロナ禍で売上が激減。いくつかの後払い決済を使い続けていたが、気づけば支払額が累積し、手がつけられない状態に。
「数万円だと思ってたのが、延滞金込みで10万円近くになっていた」と語る。最終的には債権回収業者からの通知が届き、弁護士に相談する事態となった。
弁護士法人東京新橋法律事務所の見解では、少額債権回収に特化した業者は「たかが数千円」でも法的措置を辞さず、判決が出れば給与や口座の差押えも視野に入るという(参考:https://saiken-kaisyu-law.jp/22061301)。つまり「払えない」では済まされないのが、この世界のルールである。
さらに社会問題となっているのが、未成年者による“無断契約”だ。
福岡県内の高校生男子が、親のクレジットカード情報を盗み見てオンラインゲームに“爆課金”した例では、請求額が実に43万円。事態に気づいた親が慌てて事業者に問い合わせるも、「アイテムは既に使用済みであり、契約取り消しには応じられない」と一蹴された。
民法上、未成年者が親の同意なく行った契約は取り消し可能とされている。だが、それが“実行”されるかどうかは別の話。取り消しには「原状回復」が条件であり、使ったアイテムが“デジタル空間で消費済み”では返すに返せず、「ゲーム内に証拠が溶けている」状況では、返金を勝ち取るのは至難の業だ。
また、親がクレジットカードを子の端末に登録していた場合、「黙認していた」と判断されることもあり、法律はそこまで“親切”ではない。
一方で、不正利用による被害も増加傾向にある。愛知県内の男性会社員は、「心当たりのないAmazonギフトカード10万円分の請求」がクレジットカード会社から届き、不審に思って調査を依頼。結果、何者かにカード情報を盗まれていたことが判明した。カード会社に連絡し、被害届を提出。今回は補償対象となったが、「パスワードを1234にしていた」など明らかな管理ミスがあると、補償対象外となることもある。
セキュリティは、もはや“自衛”の時代に突入している。
加えて、幼い子供による“無意識課金”も後を絶たない。北海道在住の主婦は、5歳の子がYouTubeを見ている間にスマホを操作し、ゲームアプリに数万円の課金をしていたことに気づいた。「通知が来るまでまったく知らなかった」と肩を落とすが、こうしたケースでも“親の管理責任”が問われ、事業者が返金に応じない例も多い。
こうした一連の問題を総括すると、便利さの裏側には“信用”という見えない資産が常に伴っていることが浮き彫りになる。数千円の未払いが将来的なクレジット契約に影響し、さらには法的なトラブルにまで発展することを、軽視すべきではない。
全国信用情報センター協議会の担当者は、「一度事故情報が記録されると、最大で5年間は信用履歴に残る。完済しても記録は消えない」と警鐘を鳴らす。
買い物ボタンを押す前に、一度深呼吸をして自問してみるといい。「その決済、本当に支払えるのか?」と――。
それが、ネット決済時代を生き抜くための、最低限のリテラシーである。 #事業 #ビジネス #ニュース
曇りがち
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