韓流ファンイベント「KCON JAPAN 2025」でのスタッフの不適切な勤務態度をめぐり、派遣元である株式会社スタートポイント(東京都豊島区)が13日、遅ればせながら公式謝罪文を公表した。
同イベントは今月11日、幕張メッセで開催されたが、現場で撮影された映像には、来場者を小馬鹿にするような態度を取る女性スタッフの姿が映されており、その様子がX(旧Twitter)上で拡散。たちまち「#KCONスタッフ」などのハッシュタグが燃え上がり、運営体制への怒りが沸騰していた。
しかし、問題発覚から3日が経過しての公式コメントという対応の遅さは、ファンの怒りをさらに増幅させた。実際にスタートポイントが13日に公開した文書では、「教育と指導の徹底」を謳うばかりで、当該スタッフや当日の運営責任者に関する具体的説明や保証の有無は一切言及されていない。
この対応を受け、SNS上では「たった一言で済ませるのか」「責任逃れの作文」と非難が殺到しており、同社の“危機管理能力”が問われている。
しかも今回、問題はスタッフの態度だけにとどまらなかった。映像が拡散されると、ネット上ではスタッフの実名やSNSアカウントを特定しようとする動きが急速に進行。あっという間に私的制裁が始まり、ファンの一部は「正義の名のもとに」私刑を加える異常事態となった。
だが、このような“ネット断罪”が、果たして健全な社会の姿といえるだろうか。スタートポイントは今回の発表で、スタッフ個人への誹謗中傷や特定行為を控えるよう呼びかけ、「法的措置も検討する」と記しているが、自社の対応遅れが火に油を注いだ現実からは目を背けているようにしか見えない。
そもそも、感情に任せて動画を晒し、個人を吊るし上げる風潮こそが、現代社会のモラル崩壊を象徴している。「スタッフが笑っていた」だけで糾弾され、炎上し、謝罪させられる時代。だが、その“糾弾”が暴走し、他者の人権を踏みにじるものに転化していることに、多くのユーザーが気づいていない。
「金払ってんだから何言ってもいい」「客を客と思っていない」――こうした言説が跋扈(ばっこ)するネット空間において、もはや“感動”は成立しない。イベント運営会社は責任を放棄し、ファンは怒りのはけ口を探す。そこに残るのは、文化の名を借りた断絶と対立だけだ。
スタートポイントが今回発表した「謝罪文」は、火消しを意図したものかもしれないが、既に燃え上がった炎を鎮めるには、あまりに形式的かつ遅すぎた。関係各所への説明責任を果たさず、単なる“予防線”としての法的警告を添えただけの文面は、企業倫理の低さを改めて世に晒すものとなった。
Kカルチャーを支えてきたのは、ファンの熱意と、イベントを裏から支える多くのスタッフである。だが今回の件は、その基盤に「不信」という名の亀裂を生じさせた。今後、スタートポイントおよび主催者側が果たすべきは、陳腐な「謝罪」ではなく、信頼回復に向けた抜本的な改革である。
イベントとは、演者だけで成立するものではない。観客、スタッフ、そして運営――この三者が信頼のもとに手を取り合うことなしに、真の文化は生まれない。
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