【波紋拡大】「萩生田光一“容疑者”をリコールする」 深田萌絵氏が八王子署前で“異例の宣言” 刑事告訴の受理を強調も、有権者による国会議員リコールは法的に不可能 識者「制度無視は世論操作と受け取られかねない」

2025年6月12日午後、保守系インフルエンサーとして知られる深田萌絵氏が、東京都八王子市内の八王子警察署前に姿を現し、自らの口で「八王子警察が、自身が提出した萩生田光一議員に対する脅迫罪の刑事告訴を受理した」と発表した。だが、それ以上に波紋を呼んだのは、その後の発言である。

深田氏は、警察署前で支援者らに対し、
「今日から彼のことは“萩生田容疑者”と呼んでください」と述べたうえで、
「私は萩生田光一容疑者をリコールする署名活動を始めます」と明言。動画はすぐにSNS上で拡散され、X(旧Twitter)上では「萩生田容疑者」というワードが瞬く間にトレンド入りする事態となった。

この出来事は、政治家の言動がしばしばインターネット世論と交錯する現代において、ある種の典型とも言える“炎上”の様相を呈している。しかし、今回のケースには根本的な制度的問題が横たわっている。

■「リコールできない議員をリコール」? 制度と事実の乖離

日本国憲法および公職選挙法の下では、国会議員に対する「リコール(解職請求)」制度は存在しない。リコールが可能なのは地方自治法に基づく地方議員・首長に限定されており、衆議院議員や参議院議員には適用されない。つまり、有権者によってリコールを行うという深田氏の主張は、現行制度上、法的な裏付けを持たない。

この点について、SNS上では「制度を少しでも調べればすぐにわかる話」「意図的に誤認させているのでは」とする批判が相次ぎ、リプライ欄には「炎上商法ではないか」「名誉毀損や業務妨害で逆に訴えられかねない」といった声も投稿された。

一方で、深田氏の支持者とみられる層からは、
「すごい行動力!」「日本の政治に風穴を開ける第一歩」「萩生田は追い詰められた!」といった熱狂的な賛意が寄せられており、両者の温度差が際立っている。

■告訴“受理”の意味と誤解

深田氏は「告訴が受理された」ことを殊更に強調しているが、法的には「受理」とは、提出された刑事告訴を警察が事務的に受け付けたというにすぎない。実際に捜査が本格化するか、さらには起訴に至るかどうかは全く別の問題であり、証拠の裏付けや法的構成要件を満たすかどうかの判断が今後なされる。

ある法曹関係者は、本紙の取材に対し、
「刑事告訴は、書面が一定の形式を満たしていれば、警察は基本的に受理せざるを得ない。だが、それは事実関係を認めたという意味ではない」と語る。

さらに同氏は、「それにもかかわらず、“受理された”ことを前提に“容疑者”と呼称する行為は、刑法上の名誉毀損や侮辱、業務妨害に該当する可能性すらある」と警鐘を鳴らした。

■ネット社会と政治的言動のあいだ

このような動きは、近年の“ネット選挙”や“ネット政治運動”とも呼ばれる潮流の中で、一定の象徴性を持つともいえる。政治家への批判がSNSを通じて拡大し、やがて現実世界の行動(今回のような警察署前での声明)へとつながっていく構図は、新たな「ポピュリズムの地平」を予感させる。

しかしながら、制度の誤認識や法的根拠を欠いたまま進められる運動は、当人の信頼を損なうのみならず、一般市民の法意識の混乱や、公的機関への過度な圧力となる懸念も指摘されている。

とりわけ、政権中枢に近いとされる萩生田光一議員に対し、“容疑者”のレッテル貼りを行うこのような行動が、政治的批判の域を超えた「風説の流布」となるのか否か――その判断は、今後の捜査機関と司法判断に委ねられることになる。

■警察は沈黙、今後の展開は不透明

本紙が確認した限りでは、八王子警察署および東京都警察は、本件に関して「告訴の受理」自体を含め公式な言及を一切行っていない。現時点では、深田氏の一方的な主張に基づいてSNS上で事態が先行している構図である。

今後、実際に萩生田議員が捜査対象となるか否か、また深田氏の行為が法的責任を問われるか否かは、関係機関の対応次第だ。

いずれにしても、制度無理解のまま飛び交う過激な言説が“社会的事実”として流通する現代において、冷静かつ理性的な言論空間の構築が今ほど求められる時代はない。

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