2025年8月14日、モバイル向け戦略型FPSゲーム「Arena Breakout(アリーナブレイクアウト)」の日本公式X(旧Twitter)アカウントが投稿した広告画像が、ネット上で波紋を呼んでいる。問題となったのは、世界的に知られる猫ミーム「ゲイリー(Gary)」の画像を含んだPRビジュアル。ユーザーからは「著作権を無視しているのでは」との声が噴出した。
■「許可は取ったのか」 ゲイリー公式がリプライで苦言
広告が投稿された数日後、「ゲイリー」の日本公式アカウントはX上で「ゲイリーを許可なく広告に使う?🤨」とリプライ。この投稿が火に油を注ぐ形となり、コメント欄には「ゲイリーに土下座して」「許可くらい取って欲しかったね…」「ゲイリーはフリー素材じゃない」といった批判が相次いだ。
その一方で、「ゲイリーにありがとうと言って」「これは良くないですね、いつもありがとうございます」と、ミームの文法にのっとった皮肉混じりの応援コメントも見られ、事態は単なる著作権論争にとどまらず、ネット文化全体への問いを投げかける様相を呈している。
■「Arena Breakout」とは “脱出型ルーターシューター”の雄
今回の投稿元である「Arena Breakout」は、中国Tencent Games傘下のMoreFun Studiosが開発した、タクティカルFPSゲーム。2023年7月のグローバルリリース以降、日本でもコアゲーマーを中心に支持を集めており、「Escape from Tarkov」に着想を得た脱出型ルーターシューターというジャンルを、モバイルで実現した先駆けとして注目を浴びている。
舞台は架空の紛争地域「カモナ(Kamona)」。プレイヤーはPMC(民間軍事会社)の傭兵としてダークゾーンに潜入し、貴重な戦利品を回収して脱出を目指す。特徴は、装備を持ち込んで出撃し、死亡すれば全て失うという高リスク・ハイリターンなシステムにある。最新のシーズン9では、新マップ「北嶺」の実装や、ドローン・バイオスキャナーなどの新アイテムが追加され、戦術性が一層深化している。
■「ゲイリーにありがとうと言って」とは何か
では、問題の「ゲイリー」とは一体何者なのか。2025年7月頃から日本語圏のSNSで流行し始めたこのミームは、かわいらしい猫の画像とともに「ゲイリーが〇〇を持ってきたよ!」「ゲイリーにありがとうと言って!」と添える形で広まったものだ。
〇〇には「ピザ」「コーヒー」「幸せ」「たこ焼き」など、日常のささやかな喜びや抽象的な価値が当て込まれ、ユーザーはコメント欄で「ありがとうゲイリー」と返すことで参加する。ミームとしては珍しくポジティブな空気を帯びており、「ゲイリーは今日も私たちに癒しをくれる」と好意的に受け止められていた。
このような「ゆるい共感」と「参加型文化」が融合した形は、かつての「Grumpy Cat」や「Nyan Cat」といった猫系ミームの再来とも言える存在として、グローバルで一定の市民権を得つつある。
■商業利用で「ミームの純粋性」が問われる時代へ
だが、こうしたポジティブな流行を企業が広告に転用しようとする動きに対しては、SNS上でも賛否が分かれる。「企業がミームを金儲けに使い始めた瞬間に終わる」との指摘や、「善意で広がったものをマーケティングに消費すべきでない」との倫理的懸念も広がっている。
特に今回は、ゲイリー画像の著作権者とされる運営側からの反応があったことで、「許可を得たのかどうか」が争点となり、話題は著作権の尊重、ミームの商業的扱い、インターネット文化とビジネスの境界にまで及ぶものとなっている。
■ゲイリーの波及効果? 謎の暗号資産「GARY」も登場
ゲイリーミームの人気に便乗する形で、暗号資産「Gary(GARY)」が登場したのも興味深い。一見すると猫ミームに基づくコインかと思いきや、実態は「犬」をテーマにしたミームコインで、主に分散型取引所で取り扱われている。CoinGeckoのデータによると、2025年8月現在の価格は約0.33ドルだが、取引量は前日比59.9%減少しており、すでに熱狂のピークは過ぎたとの見方も強い。
■「ありがとうゲイリー」が投げかける問い
Arena Breakoutの広告投稿が問題提起したのは、猫ミームの無断使用問題にとどまらない。ユーザーが心の拠り所とするネット文化を、企業がどのように尊重し、また利用するべきか。商業と共感、マーケティングと倫理、その境界線が今、鋭く問われている。
「ゲイリーは、みんなに愛される存在である前に、誰かが創り上げたものだ」――。その言葉に、ミームの時代を生きる我々はどう応えるべきか。
曇りがち
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