大阪の介護施設で90代女性が重度のやけど 高温湯による入浴介助中に死亡 大阪府警が業務上過失致死の疑いで捜査

大阪市生野区にある介護老人保健施設で、90代の女性入所者が入浴介助中に高温の湯に浸かり、全身に重度のやけどを負って死亡していたことが分かった。大阪府警は、職員が湯温の確認を怠った可能性があるとして、業務上過失致死の疑いで施設運営会社や関係者から事情を聴いている。

■60度の湯温に誤って浸からせる

関係者によると、事故が起きたのは8月4日午前。女性は入浴介助を受けていた際、約60度に設定された高温の湯船にリフトを使って浸けられたとみられる。介助中に女性は「熱い」と訴えていたが、身体を支えるためにリフトで固定されており、すぐに引き上げることができなかったという。

その後、全身の大部分にやけどを負い、病院に搬送されたものの、約1か月半後の9月中旬に死亡が確認された。司法解剖の結果、死因は熱傷によるショックとみられている。

■消毒作業後の設定戻し忘れが原因か

施設側の説明によると、事故当日の朝に浴槽の清掃と消毒作業が行われており、その際に一時的に高温設定にしていたという。通常は作業後に湯温を40度前後に戻す手順が定められていたが、当日担当した職員が確認を怠り、60度のままになっていた可能性がある。

大阪府警は、施設内での安全管理マニュアルや当日の記録を押収し、当時の職員配置や確認手順の実態を調べている。

■施設側「安全管理体制の見直しを進める」

事故が発生した介護老人保健施設は、市内で20年以上運営を続ける中規模施設。入浴介助や機械浴の際には複数職員が立ち会うルールを設けていたが、今回は担当職員1人で対応していたとされる。

施設の代表者は取材に対し、「重大な事故を起こしてしまい、深くお詫び申し上げる。再発防止に向けて安全管理体制を全面的に見直す」とコメント。すでに外部の介護安全専門家を招き、浴室設備や手順の再点検を実施しているという。

また、事故後は全施設で「入浴前の湯温測定を二重確認するチェックリスト」の運用を開始。大阪府の立ち入り検査にも全面的に協力している。

■府内で相次ぐ介護現場の事故

大阪府によると、府内の高齢者施設で報告された入浴中の事故は、2024年度に28件。そのうち3件が死亡事故に至っており、多くが「温度確認の不徹底」や「人員不足による確認漏れ」が原因とされている。

介護業界関係者は、「人手不足と業務の多忙化が安全確認の形骸化を招いている。介護職員が“慣れ”で作業を進めてしまうケースも多い」と指摘。今後、入浴介助を含むリスクの高い業務について、AI温度センサーや自動停止機能などを導入する施設も増える見通しだ。

■専門家「安全管理の“慣れ”が命取りに」

介護事故の分析を行う大阪医療安全研究所の長谷川智子氏は、「浴槽や機械浴の温度設定は、毎回の確認を怠ると即座に命に関わる。特にリフト浴では入所者が自力で動けないため、介助側が一瞬でも気を抜けば重大事故につながる」と警鐘を鳴らす。

長谷川氏はまた、「技術的な安全装置の導入も必要だが、最も重要なのは“確認を省略しない文化”を施設全体で共有すること」と強調した。

■再発防止へ行政も動く

大阪府福祉部は、今回の事故を受けて府内の全介護施設に対し、浴室設備の点検と職員研修の実施を要請。今後、事故報告制度の強化や第三者による安全監査制度の導入も検討している。

一方、被害女性の家族は「母は介護スタッフを信頼していた。命を預かる現場で、確認の一瞬が奪った命の重さを忘れないでほしい」とコメントを出している。

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