伊勢市で息子が助けようとした父をはね死亡 思わぬ悲劇に地域から驚きの声

三重県伊勢市で8日夜、倒れていた高齢の父親を助けようとした息子が、誤って車ではねるという痛ましい事故が起きた。亡くなったのは伊勢市在住の無職・岩森敬一さん(86)。発見したのは長男で会社員の岩森浩二さん(49)だった。浩二さんは「父を助けるために車を寄せた」と話しており、警察は救助行為の過程で起きた不運な事故として調べている。

伊勢署の発表によると、事故が発生したのは午後8時半ごろ。浩二さんは外出先からの帰宅途中、市道沿いに父が倒れているのを発見した。慌てて車を道路脇に寄せようとした際、誤ってアクセルを踏み込み、倒れていた父に接触したという。敬一さんは救急搬送されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。

現場は伊勢市中心部からやや離れた住宅地で、片側一車線の見通しの良い道路。夜間は人通りが少なく、街灯の明るさも十分ではないといい、警察は「視界不良と距離感の誤認が重なった可能性がある」とみている。車両には大きな損傷はなく、低速での接触だったとされる。

警察によると、岩森敬一さんが道路上に倒れていた原因はまだ分かっていない。持病があったとの情報もあり、伊勢署は司法解剖を実施して死因を詳しく調べる方針だ。浩二さんには飲酒や薬物の影響はなく、現時点で刑事責任を問う動きはない。

現場近くの住民は「親子仲が良く、よく二人で歩いているのを見かけた。あんな形で命を落とすなんて気の毒すぎる」と沈痛な面持ちで語った。別の近隣住民も「夜は暗く、年配の方には歩きにくい道。倒れていたのに気づいても、とっさの行動で事故になるのは怖い」と語る。

伊勢市内では、今年に入って高齢者の事故が相次いでおり、県警は夜間外出時の注意を呼びかけている。特に高齢者が体調不良で道路上に倒れ込むケースが複数報告されており、警察は「助けようとした家族が加害者になるという極めて稀なケース。救助の際にはまず安全を確保してほしい」と注意を促した。

今回の事故は、家族間の絆が招いた悲劇として大きな波紋を広げている。SNS上では「助けようとした息子が加害者になるなんて、あまりに辛い」「誰にでも起こりうる事故」「夜間の道路整備を進めるべきだ」といった声が相次いだ。

伊勢署は、現場付近の防犯カメラ映像や車のドライブレコーダーを解析し、事故の経緯をさらに詳しく調べている。警察関係者は「家族が助けを求める中で発生した事故であり、悪意のない行動の末の不幸な結果」として、慎重な捜査姿勢を示している。

温かい親子関係の中で起きた突然の悲劇は、地域住民にも深い衝撃を与えた。岩森家を知る近隣の女性は「毎朝、親子で庭の掃除をしていた。言葉にならない」と涙ながらに話した。静かな住宅街に響いたサイレンの音は、いまだ多くの人々の胸に重く残っているとされる。

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