
アミューズメント機器大手のタイトー(東京都新宿区)は、1965年に発売された国産初のクレーンゲーム機「クラウン602」の実機および資料を探す全国プロジェクトを開始した。プロジェクト名は「クラウン602全国検索プロジェクト」。同社の技術史を象徴する存在でありながら、現存する実物が確認されていないことから、全国の個人・団体に向けて情報提供を呼びかけている。
クラウン602は、高度経済成長期に誕生した日本初のクレーンゲームとして知られる。キャラメルやタバコなどの小物を景品に用い、当時のデパート屋上やゲームセンターに設置されていた。当時のタイトー技術陣が米国のアーケード機器を参考に開発したとされ、国産アミューズメント産業の黎明を支えた歴史的機械である。
しかし、現在では外観写真や部品図の一部を除き、実機はおろか設計図もほとんど残っていない。タイトーの担当者は「クラウン602は当社のアミューズメント技術の原点。歴史を継承する上で実機の所在を突き止めたい」とコメント。今回のプロジェクトでは、当時の設置店関係者や元社員、個人コレクターなど広く一般から情報を募っている。
最有力情報の提供者には10万円の報奨金を進呈するほか、発見に至った場合は復元・展示の検討も進めるという。タイトーは「単なる社内企画ではなく、日本の遊戯文化を未来に伝えるための文化アーカイブ事業の一環」としており、昭和期の娯楽産業の記録保存を目的に掲げる。
SNS上でもこの発表が注目を集め、X(旧Twitter)では「#クラウン602」「#タイトーの原点」などのハッシュタグがトレンド入り。「祖父の駄菓子屋にあった気がする」「実家の倉庫に似た機械があった」など、当時を知る世代からの目撃情報が相次いで投稿されている。
タイトーは同社公式サイトに特設フォームを設け、現物の写真・記憶・所有情報などを募集。古物商や遊戯機器マニアの間でも「幻の一台」と呼ばれてきたクラウン602の実在が明らかになれば、業界の技術史にとって大きな発見となる。
クレーンゲームの歴史をたどると、クラウン602は1960年代中盤に登場した「自動操作式の景品機」として画期的な存在だった。当時の機構はシンプルな電動レバー操作による直線クレーン方式で、後の「ユーフォーキャッチャー」シリーズや現代のプライズマシンへと発展する礎を築いたとされる。
昭和期を知る遊技史研究家は、「クラウン602は、戦後日本の娯楽が家庭から公共空間へ拡張する転換点に位置する。資料が見つかれば、単なる機械ではなく社会史の貴重な証言となる」と指摘する。
タイトーは「クラウン602発見プロジェクト」の結果を2026年春にも公表予定で、情報提供者の氏名は希望に応じて公表または匿名とする方針。見つかった場合は、博物館や自社の展示施設で一般公開を検討しているという。
プロジェクト開始からわずか数日で、X上では関連投稿が数千件に達しており、かつての娯楽を記憶する世代と若年層との間で「昭和の機械遺産」として再評価の機運が高まっている。半世紀を経て再び注目を浴びるクラウン602が、アミューズメント史の空白を埋める鍵となるか注目される。
曇りがち
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