
日本国内で女性の飲酒習慣が増加し、健康被害への懸念が強まっている。厚生労働省が2023年に公表した調査によると、女性は男性よりもアルコールの代謝が遅く、わずか1日20グラム(日本酒約1合、ビール中瓶1本程度)の純アルコール摂取でも肝硬変や脂肪肝などの疾患リスクが高まることが明らかになった。
調査は全国約2万人を対象に実施され、過去10年間で「週3日以上飲酒する女性」の割合が上昇。特に40代〜50代の働く女性層で顕著な増加が見られた。分析によれば、女性の飲酒量は平均で1日約14グラムと男性の半分以下だが、疾病の発症率では差が小さく、代謝の個人差がリスクを押し上げている。
女性は男性に比べて体内の水分量が少なく、血中アルコール濃度が上昇しやすい。さらに、肝臓でアルコールを分解する酵素「ALDH(アルデヒド脱水素酵素)」の活性が低い人が多く、肝機能障害や膵炎、胃潰瘍などへの影響が早期に現れやすい。東京医科大学の公衆衛生学教授は、「同量を飲んでも女性の肝臓にかかる負担は男性の1.5倍から2倍に及ぶ。『少しなら平気』という認識を改める必要がある」と指摘する。
特に中高年層の女性で、長期的に飲酒を続けた場合の影響が深刻化している。厚労省によると、過去10年で女性のアルコール性肝疾患の診断件数は約1.8倍に増加。更年期障害やストレスからの「自宅飲酒」「寝酒」の習慣化が背景にあるとされる。また、近年ではリモートワークや孤立による心理的ストレスも要因とみられ、心療内科や婦人科でアルコール依存傾向を訴える女性が増加している。
一方、若年層でも問題は広がっている。SNS上では「一杯だけなら大丈夫」とする飲酒動画が散見され、飲酒を軽く見る風潮が強まっている。これに対し、日本肝臓学会は「若い女性は肝機能の回復が遅れやすく、過度の飲酒を短期間に繰り返すと不可逆的な障害を残す可能性がある」として注意を呼びかけている。
さらに、女性の社会進出に伴うストレスや飲み会文化の変化も指摘されている。かつて男性中心だった職場での懇親の場に女性が参加する機会が増え、アルコール摂取量が自然に増加する傾向がある。専門家は「女性の飲酒は一種の社会的自立の象徴として捉えられることもあるが、健康上のリスクが軽視されがち」と話す。
医療現場では、アルコール関連障害の早期発見が課題となっている。女性は定期健診で肝機能異常が見つかっても「疲労のせい」「食生活の乱れ」と見過ごす例が多く、気づいたときには慢性肝炎や肝硬変に進行しているケースも少なくない。
厚労省は現在、全国の自治体を通じて「女性の健康支援プロジェクト」を展開。飲酒指導に性差を反映させ、生活習慣病予防の一環として啓発を強化している。特に更年期以降の女性に対し、アルコール摂取量を1日10グラム未満に抑える「健康飲酒指針」を提唱している。
調査担当者は「日本では男性中心の飲酒対策が長く続いたが、女性特有の代謝特性を踏まえた政策が求められる」としており、今後は性別ごとの飲酒リスクを明示した啓発キャンペーンを計画している。
医師らは「飲酒をやめることが難しい場合は、週に2日の休肝日を設けるだけでもリスク低減につながる」と述べ、節度ある飲酒と定期的な血液検査の重要性を呼びかけている。
曇りがち
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