米生産目安2%減転換で農家に波紋 高市政権発足直後の政策変更に困惑と不安拡大

高市早苗首相の新内閣が発足した直後、鈴木憲和農林水産大臣は2026年産の主食用米生産目安を前年比2%減の711万トンとする方針を示した。前政権である岸田文雄内閣は、需給改善に向けた段階的な増産政策へ舵を切っていたが、新政権は一転して減産方向へ政策を修正。需要に応じた適正生産を原則に掲げ、食料廃棄の抑制やコメ価格の安定を主な目的としている。

一方で、農業現場では政策転換が十分に周知されないまま発表されたことにより、混乱が広がっている。水稲農家からは「来年の作付け計画の見直しを迫られる」「増産方針を受けて設備投資したが負担が重くなる」といった不安が相次ぎ、JA(農協)関係者も「現場が振り回されている」と懸念を示した。政府は作付転換交付金など財政面での支援策を維持する姿勢だが、農影響緩和策の速やかな提示が求められている。

背景には国内のコメ需要減退がある。年間消費量はピークだった1990年代初頭の約860万トンから年々減少し、直近では700万トン前後で推移。さらに人口減少や食生活多様化によって市場縮小が続くなか、生産供給量が消費を上回る状態が慢性化している。その結果、自治体備蓄米や民間在庫量が膨らみ、一部では価格下落が生産者収益を圧迫している。

しかし、減産方針については反対意見も強い。災害増加や国際情勢緊迫により食料安全保障の重要性が高まるなか、「平時からの供給力維持こそ必要」と指摘する有識者もいる。ロシアによるウクライナ侵攻後、世界的な農産物価格高騰の記憶は新しく、国際市場混乱時の国産供給力低下を懸念する声は根強い。また、国内生産力後退が長期的には食料自給率の低下につながるという問題提起もある。

さらに、飼料用米や輸出向け米との生産調整は複雑化しており、経営体の規模や地域事情に応じた制度設計が不可欠だとされる。若手農業者からは「将来への投資判断が鈍る」「農業継続の動機が弱まる」との意見も挙がり、農業者人口の高齢化が進む中で政策の安定性が改めて問われる形となった。

政府は「民間在庫水準が適正化しつつある」と説明するものの、天候不順や生産リスクなどを踏まえた需給見通しの精度向上も課題として残る。併せて、米以外の国産穀物や畜産飼料の安定供給策と総合的な食料安全保障戦略の明確化が求められる。

高市政権は「現場重視」を掲げており、農業団体との対話機会を前政権以上に増やす方針を示している。政策転換の意図と具体的支援策を速やかに提示できるかは、国民生活の基盤を担う農業への信頼を左右しかねない。今後、農政の方向性が国内農業の競争力強化と安定的なコメ供給の両立につながるかが注視されている。

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