正規軍の影に隠れ、戦争の潮流を決める存在がある。民間軍事会社(PMC)。
彼らは時に国家の戦争を代行し、時に政権の運命すら左右する。イデオロギーよりも契約と利権、現場主義を信条とする彼らの実態は、表向きの「安全保障」とは別の顔を持つ。
本紙は世界のPMCの中でも、特にその影響力が絶大な組織を厳選し、詳細なランキングをお届けする。戦争の表と裏を読み解く鍵として、どうぞご覧いただきたい。
| 順位 | 企業名 | 本拠地 | 創設年 | 特徴的な戦闘・介入地域 | 兵力規模・要員数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ワグネル・グループ | ロシア | 2014 | ウクライナ、シリア、アフリカ諸国 | 最大85,000人(2023年)、受刑者動員含む |
| 2 | ブラックウォーターUSA(アカデミ) | アメリカ | 1997 | イラク、アフガニスタン、アフリカなど | 数千人規模(訓練施設含む) |
| 3 | ダインコープ・インターナショナル | アメリカ | 1946 | 韓国、ベトナム、コロンビア、中東など | 詳細不明だが航空支援などで多数 |
| 4 | エグゼクティブ・アウトカムズ(EO) | 南アフリカ | 1989 | アンゴラ、シエラレオネなど | 最大3,500人 |
| 5 | トリプル・キャノピー | アメリカ | 2003 | イラク、アフリカ、アジアなど | 22,000人(2020年) |
| 6 | G4S | イギリス | 1901 | 世界125か国、オリンピック警備など | 65万人以上 |
| 7 | ATAC、ドラケン | アメリカ | 1994、2012 | 米軍・同盟国向け仮想敵機訓練支援 | 数十人規模のエリート飛行隊 |
| 8 | エリニュス・インターナショナル | イギリス(登記地:英領ヴァージン諸島) | 2002 | イラク石油省保護、アフリカ鉱山地帯 | 数千人規模の現地要員動員 |
| 番外 | モーツァルト・グループ | アメリカ(活動地:ウクライナ) | 2022 | ウクライナの人道支援・軍事訓練 | 20~30人規模の西側ボランティア |
第1位:ワグネル・グループ(ロシア)
その暗黒の名は世界中に轟く。ロシア連邦軍の「見えない手」として動き、ドンバスやシリア、アフリカに深く介入。
シリアではアサド政権の油田防衛や反政府勢力掃討を担い、中央アフリカやマリでは政府軍の肩代わりとして反乱軍との戦闘に臨む。さらには金鉱山や伐採利権の確保、囚人徴用まで、徹底して「実利」に奉仕する姿勢を崩さない。
プリゴジンの死後も、ロシア政府が直轄に近い形で「合法的な否認」を演出し続ける。戦争の影の請負人、それがワグネルだ。
第2位:ブラックウォーターUSA(アカデミ)
イラク戦争で米政府から巨額契約を得て一躍PMCの代名詞となったが、ニソール広場事件で汚名を着る。
それでも再編を重ね、ノースカロライナ州の7,000エーカーに及ぶ訓練施設や、コンステリス・グループとの合併を通じて再生。いまや「旧ブラックウォーター」という肩書を超えて、世界の要所での警備・軍事訓練のプロフェッショナル集団として名を刻む。
第3位:ダインコープ・インターナショナル(アメリカ)
米国防総省の長年の「空のパートナー」。韓国、ベトナム、コロンビアといった紛争地に航空支援を展開。
イラクやアフガニスタンでは現地軍・警察の教育訓練を担当し、民間軍事市場の古参としていまも健在。巨大な航空機保有力はPMCの域を超え、まるで軍需企業の一部門のようだ。
第4位:エグゼクティブ・アウトカムズ(EO)
わずか300人規模でアンゴラ内戦を1年で終わらせた伝説のPMC。南ア旧軍の精鋭たちが、国家の衰退と共に職を失い、新たな「傭兵ビジネス」で蘇った。
1998年に南ア政府の圧力で解体されるも、その“少数精鋭”の作戦遂行力はPMC界の伝説として語り継がれる。2021年の再設立は、新たな「傭兵ビジネスの復活」を象徴する。
第5位:トリプル・キャノピー(アメリカ)
イラクで大使館警備を担い、一気にPMCの主流派に躍り出た。
デルタフォースやグリーンベレーの退役兵を率いて、国務省の契約を取り付けると同時に、フィリピン、ラテンアメリカなどの「高リスク地帯」にも展開。巨大化した今も、元特殊部隊兵士の矜持を胸に前線を支える。
第6位:G4S(イギリス)
PMCというより「世界最大の警備会社」。その人数は実に65万人超。
アメリカで2位の警備会社を買収し、アーマー・グループを吸収して戦地でも暗躍。国家単位では手の回らぬ安全保障の穴を、民間の力で埋める姿勢は「警備の帝国」とも言える。
第7位:ATAC、ドラケン(アメリカ)
空戦の仮想敵を演じ、パイロットの神経を研ぎ澄ます訓練支援役。
ドラケンはA-4KやL-159E、果てはミラージュF1Mまで多彩な機体を操り、米軍の最新戦術を裏側から支える。PMCというより「空の影の戦士たち」だ。
第8位:エリニュス・インターナショナル(イギリス)
イラク石油省の警備を16,000人の現地要員で支えたほか、南アやアフリカ諸国で鉱山・石油利権の安全保障に特化。
元SASの幹部が率いる「石油の盾」は、いまも鉱山企業の密かな後ろ盾だ。
番外:モーツァルト・グループ(アメリカ)
ウクライナ支援を掲げ、アメリカ海兵隊出身のミルバーンが創設。PMCというよりは「義勇軍的な志願兵集団」として短期で活動を終えたが、その登場は「戦うNGO」の新たな形を示したともいえる。
【結び】
戦争請負人たちの世界は、政治の影で動く複雑怪奇な迷宮だ。国家の意図、企業の欲望、現地の悲劇。これらが交錯する現場で、PMCは冷徹に任務を遂行する。
平和の担い手か、混沌の火付け役か——その真実を見極めるのは容易ではない。だが、戦争の行方を占う鍵は、常にこうした「影の兵士」たちの動向にある。
曇りがち
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