米国の巨大テック企業の頭文字を組み合わせた「GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)」という略称は、もはや経済メディアにおける常套句となっている。その象徴的なロゴを再現した画像が、今、SNS上でちょっとした注目を集めている。投稿者の一言はこうだ――「これの日本企業ver作りてぇな」。
X(旧Twitter)に画像を投稿したのは、ユーザー名「匠悠」氏(@Takumi_KOU_IJN)。Googleの「G」、Appleの「A」、Facebook(現Meta)の「f」、Amazonの「a」を象徴するロゴを並べた画像に対し、ユーザーらは瞬時に反応し、日本企業で同じことができないかとアイデアを次々に書き込んだ。
例えば、「TOYOTA」「SONY」「MITSUBISHI」「CHUGAI(中外製薬)」など、グローバルに展開する有力企業の名が挙がる一方で、「Toyota」「Mitsubishi」「Sony」「Hitachi」「Nintendo」「NTT」と並べてみても、頭文字が“G”“A”“F”“A”に合致しない現実に直面し、多くが「母音が足りない」と嘆く。
中には、「G:GMO」「A:Askul」「F:Fujitsu」「U:U-Next」と、苦し紛れに“GAFU”という新たな略称をでっち上げる声や、「Hitachi」「Omron」「Toyota」「Aishin」「Toshiba」「Epson」などから“HOTATE(ホタテ)”という海産物のような頭字語を編み出す猛者まで現れた。
他方で、「coat」「Acceed」「サムソンビデオ」「CAS(カス)」という“迷案”も投稿され、場はさらに盛り上がりを見せている。
◆記者が考える「日本版GAFA」とは?
こうした状況を踏まえ、当紙の記者でもある筆者が試みに案出したのは以下のとおりである。
G:GREE(グリー)
SNSやゲームで一時代を築いた企業。現在もメタバースやAI関連事業に注力しており、革新性のイメージは健在。
A:ANA(全日本空輸)
日本を代表する航空会社であり、インフラ企業としての象徴性、また海外展開という点でAppleのポジションを担える。
F:Fujitsu(富士通)
老舗ながらもクラウド・ITサービス分野でグローバル展開を続ける技術企業。Facebookにおける基盤技術の役割に近いか。
A:Aisin(アイシン)
トヨタグループの中核を担う部品メーカーで、モビリティ革新の中核として世界市場に存在感を放つ。
この並びで「GAFA」の字面と語感を一応再現することは可能だが、正直なところ“無理やり感”は否めない。英語圏の企業名は、そもそも語頭に子音+母音を配置することが多く、発音しやすい略語が作られやすい構造になっている。対して、日本企業は「N」「T」「S」「H」など硬めの子音に偏りやすく、略語化しづらいという側面がある。
◆略語の不在が象徴する“ブランド戦略の課題”
こうした“母音不足”の背景には、日本企業のグローバルブランド戦略の違いも垣間見える。米国企業が「Apple」「Amazon」「Netflix」などシンプルかつ印象的なネーミングを志向してきた一方で、日本企業は「三菱重工業」「東芝インフラシステムズ」といった長大かつ機能的な社名を好んできた。
略語化のしやすさは、グローバル市場でのブランド展開力をある程度測る指標でもある。日本企業がGAFAのような“呼ばれ方”をされないのは、単にイニシャルが合わないからではなく、言語設計やブランド戦略におけるアプローチの違いによるものだ。
◆“GAFA幻想”からの脱却を
日本にも「ソニー」「トヨタ」「任天堂」など、世界中で知られた企業は多数ある。しかし、それらを組み合わせて新たな共通ブランドを形成する発想が、あまり浸透してこなかった。GAFAの日本版を求める声は、「遊び心」であると同時に、「我々にも世界に通じる“象徴”が欲しい」という潜在的な願望の現れかもしれない。
このバズり投稿を通じて、多くの日本人ユーザーが、自国の企業群に誇りと親しみを感じていることは間違いない。だが、それを超えて「世界を驚かせるような統一ブランドを作り出せるか」は、令和時代の日本経済にとって、一つの挑戦とも言えるだろう。
(記者=西元翔栄/あしたの経済新聞デジタル)
小雨

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