国際協力機構(JICA)が横浜で開かれた第9回アフリカ開発会議(TICAD9)で発表した「アフリカ・ホームタウン」構想が、思わぬ形で世論を揺さぶっている。地方都市とアフリカ諸国を結びつけ、双方の発展を目指すとされた取り組みは、海外メディアの誤報とSNS上の過激な反応を呼び込み、国内では「日本がアフリカに売り渡される」との声すら飛び交う事態に発展した。政府とJICAは「移民政策ではない」と繰り返すが、国民の疑念は深まるばかりである。
今回認定されたのは、千葉県木更津市、山形県長井市、新潟県三条市、愛媛県今治市の四市だ。木更津は東京五輪でナイジェリア代表団のホストタウンを務めた縁があり、長井は過去のJICA事業を通じてタンザニアとつながりを持つ。三条はガーナとの産業交流、今治はモザンビークとの海事やバイオ燃料の協力が評価され、いずれも地域の特色に基づいた選定とされる。JICAは交流の内容を、数週間から数か月間の研修や文化イベント、技術協力と説明し、移民受け入れや特別ビザの発給、領土譲渡といった事実は一切ないと明言した。
しかし、海外から伝わった報道はこれとは大きく異なっていた。ナイジェリアの有力紙「Premium Times」は木更津市がナイジェリア人の生活拠点となり、特別ビザが発給されると伝えた。タンザニアの「The Tanzania Times」は「長井市がタンザニアの一部になる」といった表現を用い、BBC News PidginやBusiness Insider Africaも「日本の地方都市がアフリカ移民の定住地になる」と煽るような記事を掲載した。こうした誤報は瞬く間にSNSで拡散し、「日本の地方が外国勢力に乗っ取られる」との投稿が相次いだ。X(旧ツイッター)では関連ワードがトレンド入りし、抗議の電話やメールが各自治体に殺到。木更津市には700件以上、今治市には電話だけで450件、メールは1,000件に達し、職員からは「業務が回らない」と悲鳴が上がった。
JICAは25日付で「移民政策や特別ビザ、領土譲渡は事実無根」とする声明を出し、ナイジェリア政府などに訂正を求めた。外務省も「自治体の権限や主権に影響はない」と否定し、林芳正官房長官は「国民の不安を払拭するため、丁寧な説明を続ける」と強調した。だが、今治市長の徳永繁樹氏が「事実無根の拡散は混乱を招くだけだ」と呼びかけても、火の手は収まらない。木更津市長の渡辺芳邦氏も会見で「移民受け入れは一切ない」と繰り返したが、逆に「なぜそこまで強く否定する必要があるのか」との不信を招いている。
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