「裁判の日程が2043年?」——中国の大手EC企業「拼多多(Pinduoduo)」を巡る情報がSNS上で拡散され、波紋を広げている。中国国内の企業情報検索サービス「天眼查」によれば、拼多多系列の上海尋夢信息技術有限公司(以下、尋夢信息)に関連する司法案件が16万件を超え、その一部は開廷日が約20年後の2043年にまでずれ込んでいるという。
この拼多多は、現在グローバル市場で急拡大中の越境ECサービス「TEMU(ティームー)」の親会社でもある。低価格と手厚いキャンペーンを武器に世界90カ国以上へと進出したTEMUだが、その“成功の裏側”で膨張し続ける訴訟リスクが今、国際的にも注目され始めている。
裁判の山に埋もれる拼多多 日程調整は“2043年”の衝撃
実際にネット上で確認できた事例では、「侵害商標権紛争」や「商標権権属、侵権紛争」などの民事事件において、被告として拼多多が名を連ね、開廷日は2043年1月22日や2031年3月1日などとなっている。これらは尋夢信息が関係する数ある事件のごく一部に過ぎず、同社の法的係争リストには、裁判文書が89,000件以上、開廷公告は13万件以上にも及ぶとされる。
司法案件の総数は「163,908件」。もはや一企業が抱える法的リスクの範疇を超えており、法制度の限界や行政の後押しの存在すら疑われる規模である。
「地元政府の庇護がなければ半月で倒れていた」との声も
SNS上では「拼多多の正体」に対する不満や不信が噴出している。あるユーザーは、「上海政府の支援がなければこんな企業は半月で潰れていた」と述べ、労働者に対する競業避止義務の運用が「常識を逸脱している」と糾弾した。
投稿によれば、同社は退職者が再就職しそうなタイミングを見計らって初めて競業禁止契約の対価を支払い始めるという手法を取っており、「宝くじに当たったら代金を払うようなものだ」と揶揄された。
一方、別のユーザーは、「もしアメリカに拠点があれば、今ごろクラスアクション(集団訴訟)で皮を剥がれていた」として、中国ならではの法制度と市場構造が同社を保護している現実を指摘した。
それでも「庶民の味方」? 二極化する評価
ネガティブな意見が渦巻く中、一部では拼多多に対する肯定的な声も根強い。特に農村部を中心とする利用者層からは「安くて助かる」「ユーザーフレンドリーで素晴らしい」といった評価もある。
あるユーザーは、「拼多多のトラブル数は5.5万件で、警告は50件。タオバオは1.1万件で警告が3900件ある。むしろ拼多多のほうが健全では」と指摘し、単純比較での判断に警鐘を鳴らした。
TEMUは世界へ その足元では膨張する訴訟リスク
拼多多を展開するPDDホールディングスは、2022年に「Temu(ティームー)」を立ち上げ、瞬く間に世界中へ進出。日本でも2023年7月にサービスを開始し、わずか1年で国内EC市場4位に浮上。2024年には「日経トレンディ」ヒット商品ランキングで9位、アプリランキングでもTikTok Liteに次ぐ2位となるなど、目覚ましい成果を上げている。
Temuは、販売から価格設定、物流、カスタマーサービスまでをプラットフォーム側が一括管理する「フルホスティングモデル」を採用。販売者にとっては手間が少なく、利用者にとっては安価で手軽という利点がある。
しかし、マルウェア疑惑、個人情報流出、そして新疆ウイグル自治区における人権侵害との関与といった国際的問題が相次ぎ、米国モンタナ州ではTemuを含む複数の中国製アプリが使用禁止となった。
成長の代償としての“2043年問題”
拼多多は2015年創業、2018年にはNASDAQ上場。アリババを凌ぐユーザー数を背景に、中国国内でも急成長を遂げた。その陰で、違法商品の流通、著作権侵害、過酷な労働環境、契約トラブルなどが次々に浮上してきたことは記憶に新しい。
そして今、「2043年まで開廷できない」ほどの訴訟を抱え込むことで、企業としての持続可能性に疑問符が付けられようとしている。
“世界中に商品を安く届ける”というTemuのビジョンと、“裁判所に並ぶ膨大な訴状”という拼多多の現実。そのギャップを埋めるのは、価格ではなく、企業の倫理と信頼に他ならない。
晴天
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