【ファクトチェック】「BYD倒産」報道は誤り SNS拡散の“見出しテロ”を検証 5兆円超の債務で苦境は事実も経営破綻には至らず

「【中国EV、逝く】BYD倒産へ、借金5兆円超过ww」――こう題された記事が「ツイッター速報」と称するまとめ系ウェブサイトに掲載されたのは、6月中旬のことだった。瞬く間にSNSで拡散され、多くのインターネット利用者の目に触れた。だがこの情報、結論から言えば事実に反する。

BYDのロゴ

あしたの経済新聞編集部は、この記事の発端となったとされる日本経済新聞の記事を精査し、さらに中国EV最大手「比亜迪(BYD)」の直近の財務データと市場反応を調査した結果、「倒産」を示唆する事実は確認できなかった。本稿では、誇張されたまとめ記事と信頼性ある情報との乖離を明らかにする。


◆報道の出所は日経「BYDツケ払い限界」報

問題となったタイトルの元ネタは、日本経済新聞が2025年6月13日に配信した記事「中国EV『ツケ払いの成長』限界 BYD、仕入れ債務5年で7倍に」である。内容は、同社の仕入れ債務が5年間で7倍に膨らみ、約5兆円(2440億元)に達したという実態と、それを中国当局が問題視し、取引先への支払期間を60日以内に短縮するよう圧力をかけている、というものだった。

BYD日本法人のホームページ

さらに記事では、「Dチェーン」と呼ばれるBYD独自の電子手形システムの利用拡大により、長期の「支払猶予」を武器に価格競争を展開していた構造も詳述されている。確かに、過剰な買掛金依存と長期支払構造は、資金繰り上のリスク要因である。

しかし、どこにも「倒産」や「破産」といった文言は存在しない。


◆“見出しテロ”の構造――アクセス稼ぎ目的の煽動的演出

この「倒産へ」と断言するかのようなセンセーショナルな見出しは、「ツイッター速報(tweetsoku.news)」というまとめサイトが付けたものだ。同サイトはX(旧Twitter)や匿名掲示板(5ちゃんねる)などの投稿を集め、編集し、話題性の高いタイトルで読者を引き込む構造をとっている。

「【中国EV、逝く】BYD倒産へ、借金5兆円超过ww」というタイトルは、日経の記事を「引用」と称しながらも、倒産の事実があるかのような印象を与える形で編集されたものである。

このような誤誘導型のタイトル演出=“見出しテロ”は、まとめサイト業界で常套化しており、広告収入を目的としたアクセス誘導行為としてたびたび問題視されてきた。


◆BYDの実情――財務懸念は現実だが、破綻リスクは現時点で低位

確かにBYDの財務構造には綻びが見え始めている。2024年末時点で買掛金と手形の合計は2440億元(約4兆9000億円)にのぼり、フリーキャッシュフローは債務膨張がなければマイナスだったとされる。

とはいえ、中国政府との太いパイプと、金融機関による代替融資の見通しがあることから、倒産の兆候は現時点では認められない。実際、当局の指導のもと、支払期間短縮への対応も始まっており、市場としては成長鈍化への懸念はあるものの、破綻までは想定していない。

日経報道に登場する中銀国際アナリストの試算によれば、最悪の場合で年4000億円の財務コスト増が見込まれるが、それでも破綻とは直結しない。


◆まとめサイトの功罪――手軽さと危険性の裏表

「ツイッター速報」は、月間400万以上の訪問者を抱える人気の“情報まとめ系サイト”であり、時事性や話題性に富んだ内容をスピーディーに配信する点では一定の支持を集めている。

だが一方で、誤情報や誇張を伴う見出しによって事実と異なる印象を与える例も少なくない。とくに今回のように企業の信用問題や経済的リスクに関する情報を不用意に加工する行為は、風評被害の温床ともなりかねない。


◆編集部の見解と今後の対応

あしたの経済新聞編集部では、本件についてBYD日本法人関係者にSNS上で接触し電話で試みたが、「お答えしかねる」との返答にとどまった。


【結論(ファクトチェック結果)】

  • 「BYDが倒産する」とする情報は現時点で事実無根
  • 元となった日経報道にも「倒産」「経営破綻」の記述なし
  • 元記事は資金繰りの悪化と支払制度の変化に警鐘を鳴らすもの
  • 「倒産へ」と断定したまとめサイトの見出しはミスリーディング(誤解を招く表現)

※編集部注:本稿の内容に関して、訂正・反論等がございましたら、当紙宛にご連絡いただけますようお願いいたします。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

アーカイブ